Nicotto Town ニコッとタウン

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忘れな草(Forget-me-not)

薄汚れた路地裏のコンクリート
ひび割れから覗く、小さな青。
忘れな草。
ありふれた花言葉は、「私を忘れないで」。だが、この街の夜には不似合いだ。「忘れるな、過ぎ去った日々の残像を」トレンチコートの襟を立て、
安酒の匂いを煙に巻く。
琥珀色のグラスに残った記憶は、
昨日の夜に置いてきたはずだった。彼女...

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硝子細工の敬礼

降りしきる雨は、
俺たちの間に透明な壁を築き上げる。一人が去り、一人が残る。
その残酷な境界線に立ち、
使い古された、さよならの準備をしながら
私たちは 初めましてと微笑み合う_名前など、この波飛沫の中に捨てていけ。
振り向くな。
その背中に向ける言葉は、この海に溶ける塩よりも苦い。「初めまして」そ...

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灰色の微笑

時計の針が、残酷なほど正確に夜を削りとっていく。
俺たちは、使い古されたトレンチコートの襟を立て、
まだ見ぬ明日の欠片を探していた。胸の奥では、
いつか訪れる「さようなら」を言う準備をしながら、
俺たちは今、「初めまして」と微笑み合う。それが、この街で生き残るための、唯一の作法だからだ。差し出された...

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煙のレディー・デイ

午前三時のハーレム。
雨が錆びた非常階段を叩く音は、
あいつが歌う「グーミー・サンデー」に似ている。バーボン、安物の煙草、それに少しの孤独。
レディー・デイはマイクの前に立つ。
髪に差したガーデニアが、煙の中で真っ白に浮く。彼女の歌声は、夜の帳をそっと撫でる。
悲しみも、裏切りも、すべてを飲み込んで...

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三月の晩餐

夜の帳が下りる。
この街の喧騒が、遠い潮騒のように遠のいていく_並べられたのは、冷えたダイナーのステーキと、
ラベルの剥がれた安物のウィスキー。
贅沢を言う時間は、疾うの昔に使い果たした。向かいの席には、影だけが座っている。
裏切った友か、あるいは、かつて愛した女の幻か。
誰も答えず、ただ換気扇が乾...

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