風が あんなに優しく
僕の部屋の窓を 叩いています
淡い光を透かした うすい絹のように
それは 春という名前の 見知らぬ訪問者です僕は 机の上の書きかけの詩を
風の吹くままに 委ねてみようと思います
風は 遠い山々の 冷たい雪の記憶と
まだ見ぬ野原の 若草の歌を 運んできてくれるああ 昨日までの僕の...
風が あんなに優しく
僕の部屋の窓を 叩いています
淡い光を透かした うすい絹のように
それは 春という名前の 見知らぬ訪問者です僕は 机の上の書きかけの詩を
風の吹くままに 委ねてみようと思います
風は 遠い山々の 冷たい雪の記憶と
まだ見ぬ野原の 若草の歌を 運んできてくれるああ 昨日までの僕の...
あ、風。春の風でございます。
なんて意地悪で、お節介な風なのでしょう。
窓を開けた途端、私の部屋に溜まった、あの古臭い憂鬱を、ひょいと攫っていこうとするのです。「もう春ですよ。外へ出なさい」
そう囁く風の指先は、不躾なほどに温かく、私の怠惰な頬を撫でまわします。
庭の桜の蕾を、あんなにせっかちに揺り...
恥の多い旅路を歩いてきました。
私には、人の言う「まっすぐな道」というものが、どうしても見当がつかないのです。 *朝、目覚めるたびに、私は自分の卑屈な横顔を鏡に探す。
「お早う」と、世間に向かっておべっかを使う。
その口先の下で、真っ赤な舌を出している自分に、
私は、たまらなく吐き気がするので...
また、逃げた。
夜明けの、鉛色の空を背負って、
ぼくは無目的の切符をポケットに突っ込む。「どこへ行くのか」なんて、聞かないでほしい。
誰もいない場所、なんて、
この世のどこを探したってないのだから。
ただ、いまいる場所が、ひどく息苦しいだけ。停車場のベンチで、
安っぽい煙草の煙を吐き出しながら、
ぼ...
あえかな 月の ひかりが
森の なきがらに 降りそそぎ
きみの 面影の ひとみも
いまは 露の きらめきに銀の 糸を ひくような
夜の 静かな 弔いの調べ
星の しじまは いよいよ 深く
すべてを 蒼い 底へと 沈めて