自作【千春へ】/(手紙)9月
- カテゴリ: 自作小説
- 2014/09/19 10:40:18
『残暑凌ぎ難き候 ゐかがお過ごしでせうか。新太郎は 元気にしておりますか。私は 南方の暑さに負けじと 日々鍛錬 日々精進の連続にあります。本土とは違ひ すこおるという雨が大地を覆い夕暮れの頃ともなると 少しだけ涼が取れるのです。亜細亜は 湿つていますから 大陸に居たころに比べれば蒸し暑ひような気候で...
『残暑凌ぎ難き候 ゐかがお過ごしでせうか。新太郎は 元気にしておりますか。私は 南方の暑さに負けじと 日々鍛錬 日々精進の連続にあります。本土とは違ひ すこおるという雨が大地を覆い夕暮れの頃ともなると 少しだけ涼が取れるのです。亜細亜は 湿つていますから 大陸に居たころに比べれば蒸し暑ひような気候で...
大川大吾(おおかわだいご)は、シャッターを切った。その向こう側には無数の向日葵が咲き乱れている。 夏の終わりを告げるかのように、あたりにはツクツクボウシの鳴き声が響いている。蒸し暑く、じっとりと背中を一筋の汗が流れ落ちた。大吾はカメラを下ろし、空を見上げた。青色が一面に広がっている。いい天気だ。あ...
鍛冶屋の与作は、堤燈を片手に河原を歩いていた。さっき村の寄り合いがあって、ほろ酔いのいい気分、ふらつく脚をどうにか真っ直ぐ立たせた。
「人か?」
川面にぼんやりと二つの灯りが浮かんでいる。
「おかしいなぁ。川の上を人が歩くわけもねぇ。」
やがてそれらはもつれ合い、川の底に沈んでいった。
「なん...
空が狭くなった。そして色がくすんでいる。昔はもっと透き通るような青色をしていたと思うが、それももう思い出せない。
仲間は、みんなどこかへ行ってしまった。こんな住みにくいところでやってられないと、少しずつ減っていった。
祖父さんの、そのまた祖父さんの、そのまた祖父さんの代から、ここに住み着いてい...
気が付くと、雑木林の中を無我夢中で歩いていた。落ち葉がざくざくと音を立てる。まだ信じられないでいる。彼女が死んでしまったことを。
夏に来た時は、青葉が茂って、涼しげで、生き生きとして、とても美しい所だった。今は夕日が辺りを悲しく染めて、紅く色付いた葉が、切なく風に揺れている。
彼女の影を探しに...