Nicotto Town ニコッとタウン

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涙壺III. 骨董店にて

埃をかぶった棚の隅。
1600年代、有田の泪壺。
ひび割れた表面に、誰かの悲しみが溜まっている。店主は、「いい涙が入ってますぜ」と言った。
俺は二つ、手に取った。
一つは昨日のため。
もう一つは、まだ見ぬ明日、お前と別れる時のため。会計は、俺の孤独で支払う。
お釣りは、結構だ_

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II. 最後のメモリー

彼女の香水は、湿った雨の匂い。
あの夜、俺が差し出した煙草を、
彼女は煙にせず、そのまま街へ捨てた。「あなた、涙は溜めないの?」
そう聞いた彼女の目は、青い涙壺のように、
澄んで、静かだった。俺は答えず、ただドアを閉めた。
俺の趣向ってのは、
泣く権利を、自分から捨てることだ_

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涙壺I. 真夜中のデキャンタ

バーボンのグラスが、空になった。
涙壺なんて、気の利いたもんじゃねえ。
俺のこの、薄汚れた心を映すのは、
バーカウンターにこぼれた、琥珀色の染みだけだ。泣くな、と言った。
お前は笑って、振り返らずに街へ消えた。
その時、俺の胸の奥で、
小さな陶器が割れる音がした。それが、俺の涙壺。
欠片で指を切って...

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深い眠り

午前二時の街は、冷え切ったスープのようだ
誰もいない歩道に、ネオンの残骸が刺さっている
俺は安酒の焦げた匂いを肺に流し込み
重い瞼の裏側に過去の咆哮を黙らせる眠りは、底のない井戸に似ている
落ちていく途中で、失くした名前を拾い集める
夢という名の余計なノイズを、
一発の沈黙で撃ち抜くための時間だシー...

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遠い過去_青い訣別

あいつが窓から見つめ続けていたのは_、
地上げ屋の車でも、ネオンの光でもなかった。
この水平線の向こうにある、ゆっくりと波を切り裂き、進んでいく外国船
その白い航跡が、煤けた赤レンガの記憶を塗り替えていく。
昭和という巨大な重石を、あいつの死と一緒に、
この深い群青の底へと沈めてやる。過去は捨てた_...

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