12月自作 『鐘・刀』「見者アドウィナ」後編
- カテゴリ: 自作小説
- 2021/01/01 00:00:03
かくて赤毛の騎士はエティア王室の名のもとに、見者アドウィナを招聘したのであった。 「不死を極めたのなら、蘇生の技などもご存じなのでは」 騎士は始めに望みをかけて、黒衣の老婆にそう聞いたのだが。それはできぬと、アドウィナは顔の皺をさらに深めて、同情のまなざしを返してきた...
かくて赤毛の騎士はエティア王室の名のもとに、見者アドウィナを招聘したのであった。 「不死を極めたのなら、蘇生の技などもご存じなのでは」 騎士は始めに望みをかけて、黒衣の老婆にそう聞いたのだが。それはできぬと、アドウィナは顔の皺をさらに深めて、同情のまなざしを返してきた...
こんこんと白い雪が降る中、大広場に弔いの鐘が鳴り響く。 正面にそびえる王宮から聞こえるそれは、悲痛な悲鳴のようだ。 嗚咽のごとき、重く低い音色。聞けば聞くほど憂鬱になる―― 西の大国エティア。 王都エルジにて王が急逝したのは、王都で雪まつりが開かれた直後のことであった。...
その晩も女の良人は床から出られず、苦しそうにうんうん唸っていた。 何日も寝たきりのせいで、手足の節々が痛むという。 かわいそうにと女は、娘と一緒に良人の体をさすってやった。 そうして翌日、日が傾くのをじりじりそわそわ待って、市場へ出かけた。 五色の吹き流しが下がるお店に...
火鉢を出したのだけれど、炭がなかった。 ほんわりと柔らかな熱を手のひらに当てるのは心地のよいもの。雪が降ってからなぞと悠長なことを思わずに、毎年蔵から引っ張り出している。 母さんごめんなさいと、娘が厨房で、両手にはあはあと息を吹きかけながら茶碗を洗っていた。吐く息が真っ白だ。 「買いに行...
がら開きのトラックの窓から、びゅうびゅう風が吹き込んでくる。 青空の下に、真っ赤な砂漠が広がっている。 道なき道を、トラックは走る。ひたすらに。地平線の向こうを目指して。 つらなる砂丘。孤空を飛ぶ鳥。はるか遠くに、ラクダの列。 えっ? 隊商? これは…&h...