6月自作 アジサイ「嫉妬」
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/06/30 23:56:56
庭にしとしと、雨が降っておりますんで、本日、舞のお稽古は延期です。 うちがそう申し上げますと、姫さまは、ぶっくりふくれっ面にならはりました。 姫さまは来週、弘徽殿の御方にお呼ばれしておりまして、そこで舞を披露したいと、ありていにいえば、弘徽殿の御方に見せつけたいと、思し召してはったから...
庭にしとしと、雨が降っておりますんで、本日、舞のお稽古は延期です。 うちがそう申し上げますと、姫さまは、ぶっくりふくれっ面にならはりました。 姫さまは来週、弘徽殿の御方にお呼ばれしておりまして、そこで舞を披露したいと、ありていにいえば、弘徽殿の御方に見せつけたいと、思し召してはったから...
それからぶつぶつと文句を垂れ流しつつ、うちは仕方なく、姫さまの御家が抱えてはる絵師の中で、一番の腕を持ってはる御方に白羽の矢を立てました。 それは賀茂という名の方で、姫さまの父君のためにしばしば、いとうるわしい天体の図などを、色鮮やかに描いてはるのです。 事情を話しますと、賀茂さまはニ...
一つ下の条《じょう》にお住いの若君が、ねこま憑きにならはった。 という噂が舎人《とねり》から舞い込んだもので、うちの姫さまは本日、ころころ笑い転げはっております。 畳台に扇をバシバシ、何ともはしたないご様子にて、乳母《めのと》さまも、女中のうちも、呆れ顔。せやけどまあ、いたしかたござい...
しかしてつい最近スパルタは、戦場でエーリスを完膚なきまでに打ち破った。圧倒的に立場が強くなっている今、王はエーリスが主催する大祭など取るに足らぬもの、女性ですら栄誉を得られるものだと、大いに貶めたいらしい。
間男というのは、稀代の美丈夫、アルキビアデスのことである。あろうことかこのアテナイ人は、...
風が肩を斬ってくる。前方から打ち付けてくる風に当てられて、戦車を駆る男の頬が冷えてきた。小さな風の神(アネモイ)たちが吹き抜けていく音を楽しみたい。御者たる男は一瞬そう思ったが、今は戦車競技の真っ最中だ。もっと激しく、革の手綱を打たねばならなかった。 「がんばれ! 行け!」 御者は革の綱...