Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



悲しみの遠景 —冬桜—

季節外れの狂い咲きだと
誰かが肩をすくめて通り過ぎる。
だが、凍てつく風に耐えるその花弁は
返り血よりも白く、静かだ。温もりを捨てた枝の先
掌にこぼれ落ちたのは
雪か、それとも散り際の火花か。報われることのない忠義のように
枯れ色の中に、一点の意地を置く。遠ざかるほどに、鮮明になる。
あの日、守れな...

>> 続きを読む


悲しみの遠景

氷の溶けきったグラスの底に
沈んだ昨日の残り香を
指先でなぞる。都会(まち)は
誰かの涙を飲み干しては
ネオンの飛沫を撒き散らす。背中の傷が疼くのは
過ぎ去った季節のせいではない。
ただ、遠ざかる背中を
見送る術を知らなかっただけだ。悲しみは
雨に洗われたアスファルトのように
鈍く、静かに
朝の光を...

>> 続きを読む


都会の夜の雨

酒場の窓は、青い夜の顎(あぎと)
泥にまみれた雨が、しんしんと降つてゐる。
僕のトレンチコートは、昨日よりまた少し
孤独な匂いを濃くしたやうだ。グラスの氷が奏でる、安っぽいチャイム、
誰を待つのでもない、ただ座ってゐる。
ネオンのサインは、壊れたフィルムのやうに
君の思い出を点滅させては、消す。愛だ...

>> 続きを読む


錆びた本能

20年、平穏という名の麻酔に浸かっていた。
安物のコーヒーを啜り、
誰にでも代わりのきく仕事で一日を潰す。
俺の牙は、とっくに生ゴミと一緒に捨てたはずだった。だが、路地裏から流れてきたのは
かつて嫌というほど嗅いだ、オイルと湿った鉄の匂い。
それと、暴力の前触れにある、あの嫌な静寂だ。体が勝手に、最...

>> 続きを読む


蒼い呼び声

月光が、古い傷痕をなぞる
20年という名の檻の中で
俺はすっかり、ただの飼い犬になり果てていた
名前を捨て、牙を隠し
穏やかな死を待つだけの、ただの影としてだが、この手紙を書き終えたとき
肺の奥で、眠っていたはずの獣が目を覚ました
静かに、だが確実に
氷点下の血が、再び熱を帯びて巡りだす街の雑踏に紛...

>> 続きを読む





Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.