Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



灰の帳尻

炉の唸りは、すべてを等しく飲み込んでいく。
かつて喉元に刃を突きつけ合った仇敵(かたき)も、
背中を預け、冷えたコーヒーを分かち合った友も、
今は同じ、無言の沈黙だ。経済という名の戦場、鉄火場で弾き出した。打算の数字
そのために捨てた家族の約束。
守れなかった寝顔と、奪い取った椅子の重み。
結局、人...

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終止符の煙

重い鉄扉が、この世のしがらみを噛み切る。
ゴロゴロと、魂の抜け殻がレールの上で運ばれていく。
そこに感情はない。ただの物理的な移動だ。俺はコートの襟を立て、火をつけ損ねた煙草を弄ぶ。
ここは死を悼む場所じゃない。
未練を、摂氏千度の熱で無機質な「灰」という事実へ書き換えるための工場だ。点火のスイッチ...

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煙の向こう側

煙突から吐き出された灰色の煙が、
冬の鉛色の空に溶けていく。
あいつの最後のエールだ。
案外、さっぱりしたもんだ。待合室の自動販売機、
冷たいコーヒーの缶を握りしめる。
熱いのは炉の中だけで十分だ。焼却炉(ハコ)の中の熱気は、
あいつの背負っていた因縁も、
俺の薄汚れた過去も、
1200度の炎で、白...

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硝子の涙壺

路地裏のバー、氷の溶ける音だけが
唯一のまともな会話だった
カウンターの隅、琥珀色の液体の隣に
場違いな小さな壺が、街の灯を拒んでいる「それはなんですか?」
バーテンダーの問いに、俺は火を点けた
安物の煙草の煙が、記憶の輪郭をぼかす
「涙壺(ラクリマトリ)さ。古代の連中が、悲しみを貯めたっていう」俺...

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涙壺IV. エピローグ -砂の雨-

夜明けの空に、涙壺を投げた_
粉々に砕け散れ。
砂粒になった悲しみは、街を濡らす雨になる。俺はトレンチコートの襟を立て、
バーボンの香りを残して、
また、次の街へ歩き出す。涙なんて、飲んでしまえば、
ただの塩辛い水だ_

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