銀の弾丸(クリスマスローズ)
- カテゴリ: 日記
- 2026/03/13 23:14:25
凍てつく夜の帳が下りる頃
街の隅、誰も見向きもしない庭の片隅で
奴は項垂(うなだ)れていた
まるで、自らの罪を数える男のように。「クリスマスローズ」――
甘い名前に騙されるのは、素人だけだ。
奴の真の名はヘレボルス。
古(いにしえ)の言葉で「殺す植物」を意味する、
白銀のコートを纏った殺し屋さ。項垂...
凍てつく夜の帳が下りる頃
街の隅、誰も見向きもしない庭の片隅で
奴は項垂(うなだ)れていた
まるで、自らの罪を数える男のように。「クリスマスローズ」――
甘い名前に騙されるのは、素人だけだ。
奴の真の名はヘレボルス。
古(いにしえ)の言葉で「殺す植物」を意味する、
白銀のコートを纏った殺し屋さ。項垂...
誰も見向きもしない
二月の終わりの、湿った土
寒さに震える男の懐みたいに
そいつは項垂(うなだ)れて、そこにいる白か、紫か、それとも陰気な黒か
清楚? 笑わせるな
その項垂れた顔の裏には
冷徹なヘレボリンが隠されている「私の不安をやわらげて」だと?
皮肉な花言葉だ
触れれば、毒が回る
過去の記憶みた...
アスファルトが濡れた黒い鏡に変わる夜、
街灯の光は、安物の宝石のように歪んで滲んでいた。
路地裏のバーの扉を押し開けると、
湿った空気と一緒に、あの低いハミングが流れ出す。
奴がいたのは、荒野ではなく、このコンクリートの迷宮。
コートの襟を立て、帽子を深く被り、
誰にも見えない「何か」から逃げるよう...
ガチャン、と受話器を戻す。
鉄の感触が指先に残り、世界は再び雨の音に支配された。一歩外へ踏み出せば、春の嵐が容赦なくコートを叩く。
それは優しさなど微塵もない、すべてをなぎ倒そうとする暴力的な風だ。ポケットの中で、沈黙したままのスマホが揺れる。
さっきまで繋がっていた受話器の温もりとは対照的な、冷徹...
土砂降りのなか、緑の箱だけが浮いていた。
水滴のヴェールに包まれた、孤独な潜水艦だ。ポケットで文鎮と化したスマホを弄る。
デジタルが死んだ街で、俺は硬貨の重みを頼りに歩いた。錆びついたドアを引くと、湿った安堵が鼻をつく。
受話器を上げれば、そこにはまだ「生きた」音が流れていた。
絶え間ないノイズ――...