クロード×クレア(弟子のナナヤ様)2
- 2024/04/27 00:34:35
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名前(フリガナ):クロード・シーバック
性別:男
年齢:23
容姿:紺碧を思わせる深く澄んだ蒼眸。軍人らしく短く切り揃えられた髪はやや左寄りに真っ直ぐ左右に分けられ、襟首を隠す目的で襟足の髪は残している。この大陸では珍しい、蒼銀色の髪。光の加減では氷雪が反射しているような輝きを見せる。
肌は一般的な肌色。
性格:常に冷静沈着で表情一つ崩すことなく、的確に任務をこなしていく。厳格な家柄もあり、清廉潔白な立ち居振る舞いをモットーにしている。その見た目と名前から「キゾンの氷鷹」と称されることが多い。だが、社交的ではない為、憧れとされる対象にはなるものの、心から打ち解けあえる友人も知人も存在しない。孤高の人。
その他:軍人の家系故に幼い頃から英才教育を受けており、剣術においては騎士団の中でも5本の指に入るほどの実力を有する。まだ騎士団の長に就く前の、騎士に上がり立ての頃、己の過信が招いた失態で瓦礫に埋もれて動けなくなってしまった事があり、恥ずかしながら若い女性に助けられた。その勇敢さと分け隔てのない情熱に天啓ともいえる感銘を受けたことが、後の清廉潔白な生き方に繋がった。
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名前(フリガナ):クレア ・ ロバーツ
性別:女
年齢:21
容姿:
ミルクティーベージュの髪色でボブぐらいの長さ。後ろで1つに結んでいる。ブラウンのぱっちりとした目をしており、光を受けると若干黄色の瞳にも見える。前髪は眉毛あたりで左へ流している。身長は158センチ。支給されている軍服を着崩すことなく着用している。
性格:
周りからは「お人好しな奴だ」と言われるほど優しい。助けを求めていたり、困っている人がいると自分よりも相手を優先して助けてしまう程。人見知りな面もあるが、慣れるとすごく懐く。恋愛に対しては不慣れで、そもそも”好き”という気持ちをあまり理解していない。そのためか妙に意識してしまったり、緊張してしまったりと普段とは様子の違う姿になってしまう。
その他:
ベレアン帝国の一般兵士。弓矢の腕がいい。小さい頃に戦争に巻き込まれ、家族を失っている。瀕死状態の中、瓦礫の下敷きになっていたところを兵士に助けてもらったことで一命を取り留めた。以降、困っている人を救えるような人間になろうと兵士になった。昔、がれきの下敷きになっている姿を見て、自分と重ねてしまい、敵国(キゾン王国)の騎士を助けたことがある。その相手がどんな人なのか、名前すら知らない。
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参加者様キャラ名:クロード・シーバック
管理人キャラ名:クレア ・ ロバーツ
ストーリー:
戦争で負傷を負い、命かながら森に逃げ込んだクレア。そこで敵国(キゾン王国)の騎士団長であるクロードに助けられ、しばらく彼の部隊に居させてもらうことになった。素性がバレていなかったため、クレアはキゾン王国の軍人になりすまし脱出の機会を伺っていた。しかし彼と接するうちに自分が妙に彼を意識しているのを感じ取っていた。そんな時、上流階級のみが参加できる舞踏会が行われる。クロードの計らいからクロードと一緒にクレアも参加することに。彼が別の女性と話している姿に嫉妬する自分、そして彼と踊ったときの高揚感。自分はクロードに恋したことを自覚する。
恋心を自覚してからクレアは自分の気持ちと彼を騙しているという罪悪感を抱いていた。そんな時、城内に敵国の侵入者がいるという情報が流れた。見つかる前に逃げ出さないと、と思った矢先、彼の書斎からクレアの名前が入ったベレアン帝国の腕章を見つける。ベレアン帝国の兵士たちが必ず身に着けるものであり、クレアはてっきり無くしていたと思っていた。クロードは自分の正体を知っていて黙っていた、クロードに騙されていたと知り、激怒する。クレアは無理やり城から逃げ出そうとしたが、見つかってしまい、牢獄に囚われてしまう。ここで死を迎えるのか、そう覚悟したとき、クロードが助けにやってくる。無事に生還できたクレア。クロードは「最初から敵であることは知っていた。知ってて、助けた。…昔、君が俺を助けてくれたから。」と打ち明ける。
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店主からの問いかけに我に返る。明らかに怪しまれているのが分かった。返す言葉も見つからずあたふたしていると、リドーが話題を変えるかのように店主に声を掛けた。
片腕しか動かない、蒼い瞳の青年。私の知っているクロードの髪色は蒼銀色だが、今は訳があって黒髪なのかもしれない。でなければ、リドーは店主にこんな質問をしないだろう。まるで私の考えは正しいのだ。彼はここに立ち寄ったのだと。
「リドーさん、…ここまで、ありがとう。…あとはひとりで大丈夫。」
視線は刀に向けられたまま、でもその目は刀を捉えていない、その遠くにある何かを見つめているかのように瞳のまま、リドーにお礼を言う。そして顔を上げて少しだけ会釈すると、店主にも一礼して足早にその場を去った。
”…っ……どこ?…どこにいるの?…”
人混みをかき分けながら彼の姿を探す。周りは賑やかで華やかなのに、私の視界は真っ暗で、光を探すかのようにもがいている。まるでクロードからあの日逃がしてもらい、ベレアンまで彷徨った夜道をもう一度もがいているようだった。
探しても探しても見つからない。もしかしてもう場所を移動してしまったのか?それともすでにすれ違っていて、私が見つけられないだけ?不安と焦りが襲う。
やがて屋台の立ち並ぶエリアを抜け、路肩の小さな茂みに辿り着く。そこは一か所だけ木々の生えていない芝生があり、月夜がその場を照らしている。久々の慣れない人混みと緩まない気持ちに疲れてしまっていたところだった。
その光に導かれるように芝生の上に身体を倒す。やはり私たちは出会ってはいけないのだろうか。
堕ちていく意識に、目を閉じかけていた。
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昔クロード様がクレアを拾ってもらった時の、類似再現ができればと思い、クロード様に来てもらえますと幸いです、、、(勿論難しければ別ルート考えます)
イラストありがとうございます…!本当お上手ですね、とてもイメージが湧きました
ありがとうございますm(..)m
片方は明日お返事いたします
黒い髪の人種は決して多い訳ではないが、ここいらでは見ないという事も無い。だが蒼銀色の髪ならまず忘れはしないだろう。そんな特別な人間がこんな所を彷徨いているとは、店主は考えていなかった。
「お嬢さんはキゾン王国に関係する人かい?」
改めて彼女に問う。フーゴンでは武具を扱う手前、何らかの関わり合いを持つ職人はそれなりに存在する。いわばキゾン王国はお得意様なのだ。
だがベレアンではこの間まで敵対していた。蒼銀色の髪色を持つ者は、キゾン王国の中でも高貴な家柄にのみ受け継がれると言われている。
そんな相手を“探している”とは軽々しく口にしない方が良いだろう。
クレアのあまりに必死な様子に、思わず店主は忠告をしたくなった。
会話の内容がクロードについてだと気づいたリドーは、口を挟んだ。放っておけばややこしくなりそうだと感じたからだ。
「済みませんが。その男性の両腕は普通に動いてましたか。それとも、片腕は動かなさそうだった、とか。」
一瞬、怪訝にリドーを店主は見たが、言われて思い当たる節があったか、すぐに納得した様子で相槌を打つ。
「ああ! そう言えばそうだったよ。まあ、(戦争終わりの)このご時世じゃあそういう人間は多いからね。」
その一言にリドーは確信する。後はどうクレアに伝えるか、だが。
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…クレア様が感づくだろうか、と思って止めてみました。(ちなみに下のURLは、クロードの見本画像です)
画像のみ【蒼銀髪/黒髪】
https://47367.mitemin.net/i1002499/
https://47367.mitemin.net/i1002509/
…勝手ながら、クレア様とカイ様の生成イラスト画像、作ってみました。
「イメージと違う」箇所があるかと存じますので、指摘頂ければ幸いです。
なろうサイト
https://novel18.syosetu.com/n4139ip/16
クロードもクロードできっとクレア様を迎えに捜し回るかと(黒髪だし)。二人が出会う場所の希望があれば伺います。
そして店主はこういった、”預かっている”と。
「あ、あの!」
他の飾り物に目を向けず、店主の方を必死な形相で見つめる。
「こちらは、誰から預かっているものですか…? その人は…蒼い瞳をした、蒼銀の髪色の…男性、でしたか?」
ぎゅっと握り締めた拳から力が抜けない。気づかないうちに息も上がってきている。先ほどの会場もそうだ。そこにいたという彼の姿が、私の目に入ることはない。いつも何もなかったかのように空気だけが底に残っている。そしてこの短刀もその一つだ。しかしあともう少し、もう少しだと思えるのは何故だろうか。
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ご提案ありがとうございます。
クレアは自分から会いに行きたいらしいので、この短刀をもとにクロード様を追っかけます。
姿が見えたら声を上げるので、気づいてくだされば嬉しいです
「どういう事情かは知らないが。この短刀だけでもその飾りに見合うだけの価値がある代物だ。こいつは担保として預かっておくから、残りの金は祭が終わるまでに持ってきなよ。」
そう店主はクロードに約束した。何度も礼を言うクロードを見送り、改めて短刀の鑑定を行う。まさかこんなところでキゾン王国の貴族の所持物を目にするとは。驚きと興奮で心臓が跳ね回っている。これぞ刀工冥利に尽きるというもの。
そうして随分と長く、店主はその短刀の意匠を食い入るように見ていた。
それから小一時間が経過した頃。店の前で立ち止まる女性の存在に気付いて、店主は顔を上げた。
「ん…いらっしゃい。どうかね、お嬢さんの好みに合うアクセサリーが見つかったかい?」
営業スマイルで店主はクレアに顔を向けた。手にしていた短刀を脇に置き、ここぞとばかり作品を寄せ集めてくる。実際、意匠を凝らしたものも多く、丁寧に作られているのが一目でわかる品物ばかりだ。だがクレアの目が先程の短刀に向いたままなのを見て、切り替えた。
「お嬢さん、そんなにこの短刀が気になるかい。」
そう言ってクレアの目の前に差し出す。だが渡すことはせず、少しだけ鞘から抜いて刀身を見せた。中は錆びていてそのままでは使えないのが一目瞭然だ。
「済まないが、これは売り物では無いんだよ。とある事情で預かっていてね。」
そう言うと、再び刀身を鞘に納める。クレアの目の届かない所へ仕舞い込むと、また営業用のスマイルを向けた。
「だが、此方の品はどれでも手に取って御覧頂けますぞ。お嬢さんにお似合いの飾りもきっと見つかりましょう。」
さあさあ、と店主はクレアに強気で店の商品を勧めた。
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この後のクロードですが。
大雑把には、『人混みを掻き分け、猛ダッシュ…のちクレア様の名を叫びながら抱き締める』です。(クロードがクレア様を見つけた際の行動がコレ一択だったので)
細かいニュアンスとして。
1.人込みからいきなりクレア様を抱き締める
2.大声で「クレアっ!!」様の名を叫んで走り寄ってギュッ
3.肩に触れて顔を確かめて(溜めて)から抱き締める
他は一切目に入らず、です。お好みで選択をば宜しく願います
それからリドーは他のエリアの説明をしてくれる。正直気になる気持ちがない訳ではなかった。それよりも会いたい人に…。いや、この広い会場のどこにいるかもわからないのにそう急いだって意味がない。焦る気持ちに折り合いをつけ、私は肩の力を抜いた。
「刀工エリアまで、案内頂けますか?」
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20分程度歩いた頃だろうか、刀工エリアに到着する。リドーとはその道中、ロインの話やあの村の話を聞いた。クロードの話は、あえてなのか、何もしてくれなかった。噂が一人歩きしてしまうような人だった。風貌や戦闘技術、騎士団長という地位に皆が自分から見たクロード像を口にしている。尊敬するという人もいれば、いけ好かないという人もいた。そちらの方が大半だった気がする。
でも私から見れば、そのどれもが当てはまらない。本当は取っても不器用で、努力家で、そしてとっても優しい人。…あぁ、ダメだ、会いたい。
リドーは案内してくれてからも、私の様子を気にしてか、もう少しだけ傍に居てくれた。
そんな時だった。とある店舗の前である品物に目が止まる。
それはとても見覚えがあってなじみのある短刀だ。店主が物珍しそうに眺めている。
「それ……」
弟のロインが居ればきっと、彼女の口のクリームを何の気なしに舐め取るんだろうな、と。
「良かったらこれ使って。」
リドーはポケットからハンカチを取り出してクレアに差し出す。次いでクリームが付いていることを示すように、自分の顔で同等の場所を指さした。
「西側の染織物エリアも、反対の刀工エリアもここ(中央広場)からは少し離れているから、良ければそちらまで送ろうか?」
興味があればだけれども。乗合馬車の運行も通っているが、歩けばそこそこ時間のかかる距離だ。まあ後はクレア次第だから。自分が案内するのはここら迄だろう。
その頃。クロードは刀工エリアにいた。
意匠の凝った刀剣や武具が、各工房の店内に並ぶ。それを店の外から眺めつつ、ぶらりと時間を持て余していた。
もはやそれらは自分の力量では扱えない代物だ。懐かしく思う分、それ等を手に取れる者達を羨ましく感じている。盾代わりの頑丈な籠手を使っているが、出来るなら実用の懐刀位は用意しておきたい。そんなことに気を巡らして当て所なく歩くクロードの目に薄緑の鮮やかな輝きが飛び込んできた。
路地に並ぶ露店に置かれたアクセサリーだった。ペリドットの輝きが銀細工の花の下で目を惹く。丁度葉の部分にあしらわれているのだが、あの(舞踏会)時のドレス姿のクレアが目に浮かぶようで。釘付けになる。
「お客さん。さすがお目が高い。そいつはかの有名な工房で作られた逸品だ。使っている宝石も一級品で、ここいらじゃなかなか採れない物だよ。」
「…幾ら、なんだ。」
少しばかり此方を値踏みするような眼を店主は向けていたが。クロードの地元民に馴染んだ服装を見て、軽く首を横に振る。
「1万€だ。精礼祭だから、多少のイロは付けてやれるが、安売りは出来ないね。」
配布されている定額チケットを全額投入しても足りない金額だ。それでもクロードは残りの金額を持ち合わせの全財産からかき集め、足りない分を補うようにクレアとの絆の短剣を目の前に差し出した。
「頼む。これで売ってくれないか。」
その剣を査定して、店主の眼も変わる。
「錆びちゃいるが、こいつは良い品物だな。わかった。持っていきな。」
クロードはその髪飾りを手に店主に礼をした。
リドーが隣で祭り会場の説明をしてくれた。丁寧で分かりやすい説明だった、のに、しっかりと覚えておけるほど頭に入って来なかった。自分の視界に入る色鮮やかな屋台を見ても、賑わう人々の声を聞いても、楽しそうだとか美味しそうだとか、全く思えなかった。
この高台に来てもそうだ。美しい眺めのはずなのに、モノクロのように見えてしまう。
早く会いたい。…クロードに、会いたい。
そう思っていた矢先、手渡されたデザートに目を丸くする。昔、城下町の警備の屋台で見たことのあるデザートだ。美味しそうな香りでも勤務中の為食べることができなかった。
それを差し出され、受け取る。一口頬張ってびっくりした表情を見せる。
「こ、これ、…おいしい!」
その甘さのおかげで狭まっていた視界が少し開ける。
その表情のままリドーを見ながら少女のように声を出した。口にはクリームも付いてしまっている。
そう言って貴賓席を指さす。開幕のセレモニーは既に終わっている。今頃は迎賓館に引き上げているだろうが。
「午後には仕事が終わる筈だから。それまではこれで楽しんできてくれ、と。」
用意された定額チケットをクレアに渡す。説明はしなくても村を出る前に聞いているだろう。勿論、自身のも含めてロインやアヨルの分もリドーは預かっていた。
そうして、軽く会場内の説明をしながらクレアを案内する。
「食べ物の屋台は大体、セレモニー会場になっている中央広場に集まっている。染織物系は西側のエリアが多いし、アクセサリーと刀工はエリアが重なっているから混雑するんだ。陶器市は二週間後から中央広場で行われるんだが、それまでは各工房を回って見るのが良いよ。」
新婚家庭はまず刀工エリアに行って切れ味の良い包丁を入手してから、陶器市を目指してくるらしい。それまでは堅実に食材の直売目当てに通って、生活に余力があれば、染織物やアクセサリーを見て回るのだという。そして祭りの最終が近づいてくると冬越えの為の衣類のバザールへ、みな争奪戦を繰り広げる…。
買い手もやり手なら、売り手も同じ。生活のかかっていない者達だけのんびりと祭りを楽しむ。果たしてクレアはどうだろうか、な。
そして当のクロードはどうするのか、まあ貴族階級の人間には関係ない話かもしれないな、と祭の会場を一望できる高台までクレアを案内する。
「ここらなら、街の造りが良くわかるだろう?」
迎賓館が建つ台地の縁の、役所の最上階テラスに二人で並んで、リドーは先刻テラス入口で買った名物のクレープをクレアに手渡した。
私がここに来た理由はたった一つ。_あの人に…クロードに会うためだ。ここに来る前にリドーから彼がこの会場に来ていることを教えてもらった。彼も私のことを覚えていてくれているようで、少し安心した。馬車から降りて散らばる村人たちの中で、一番最後までその場に留まっていた。するとリドーが近づいてきた。
「…クロードは、どこにいるの?」
一応一通りの約束事を終えれば後は無礼講になるらしい。クロードはアルバレスと共に王女の傍らに立ち、不遜な輩が暴挙に出ないか、終わるまでの間眼を光らせていた。
無事に精礼祭の開幕セレモニーが済んで、迎賓館に引き上げる一行に倣って、ルアハ王女を後方から護衛する。距離を保ちつつ歩くクロードは突然、王女に声を掛けられた。
「クロード。」
それまで機嫌よく他の貴賓達との歓談していたにも拘らず、彼女は突如足を止めた。呼ばれたクロードは静かに指名を受けて、軽く頭を下げて待つ。王女の事だ。何かまた突拍子もない事を思い付いたのだろう。顔には出さないが、困ったものだと内心苦笑いしたのだが。
「貴方、今から休暇を取りなさい。」
「…は?」
あまりに唐突な命令に、クロードは戸惑った。護衛官として当然この後も王女等に付き従うつもりでいたからた。
同僚のアルバレスや他の事務官らも驚く様子はなく。よくわからないが、何か不評を買うようなことをしてしまったのか、と反省する。クロードのそんな考えを見越してか、王女は強い口調で叱咤するように言い放った。
「働き過ぎなの、貴方は。きちんと休息を取る姿を部下に見せるのは、上に立つ者として必要不可欠だと自覚しなさい。」
何のことだかわからずに、クロードは困惑する。十分に体は休めているし、任務に支障を来たすような事もない。そんな風に戸惑っていると、更に王女は詰めてきた。
「この間もその前も、休日にボランティアで部下の手伝いに回っていたじゃないの。そんなに仕事がしたいというなら、これは絶対命令よ。クロード・シーバック、今から3日間、全力で祭りを楽しんできなさい!!」
強制的にその場で服を脱がされ、護衛用の制服を取り上げられる。代わりに一般人の服装がクロードに押し付けられた。用意周到に謀られたように、宛がわれた服を着させられて。クロードは各会場で使える定額チケットを渡されると、王女一行から強引に引き剥がされていく。
そうして急遽、祭の会場へ放り出された。
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クレア様にもリドーから定額チケット渡しますので。
けれど、私はその気持ちには答えられない。だけど。
彼が意を決したように私の背中を押す。やっぱり、優しい人だ。
「……ありがとう、ロイン。貴方に出会えて、よかった。」
溌剌とした笑顔を見せるロインとは対照的に、落ち着いた柔らかくもどこか寂しさのある微笑みを浮かべた。
それから1週間後。リドーが村を訪れた。
どうやら精礼祭への参加に招待するために来てくれたようだった。
遅くなってほんとすみません、、
もう一つは明日返します!
…っとに、何ガキみたいなことしてんだ俺は。
自分でもわかっているだけに、ロインは歯痒かった。ちゃんとクレアの幸せを祝福してやりたい気持ちはあるのだ。グシャグシャと自分の頭を掻き、まともに顔を見せれなくてそっぽを向く。それでも自分の中の気持ちにどうにかこうにか決着をつけて、ロインは改めてクレアの方を向いた。
「会って来いよ。会って、捕まえたら絶対に離すなよ。なっ!」
最後はあっけらかんとした笑顔で応援する。やっぱりクレアには笑っていて欲しい。だから、気持ちよく送り出してやるんだ。
(クロードに盗られる)悔しさはある。けど何が一番大事なのかを考えたら、自ずと答えは出ているから。思い切って言ったら案外気持ちはすっきりした。
「…だ、…だから!ゆ、許してるって…!言ってるじゃん…!!」
噛みながら吐いた言葉は、ロインが許しを請うためにした行動だと考えていた。そもそも許してもらえるだけで十分と言っているにも関わらず、動揺が収まらなかった。一番近くで、自分をアヨルと同じように妹のように助け、傍に居てくれた人だったから、冷静でいる方が難しかった。
「わ、…私だって、…ありがとう。」
村を出てから助けてくれたのはリードであるが、実際はロインだ。彼が兄に助けを出していなければ、私は野獣の胃袋の中にいたのだから。
それから息を整えるとちゃんとロインの方を向いて、口を開く。
「…ロイン。…私、…クロードに会いたい。…あの人に、会いたいの。…会ってきても、いい?」
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もう一つは今日中にお返しします(..)
「いいんだよ。」
優しくそう声をかけた。妙にすっきりとした気持ちだった。
「怒っていいんだよ。怒鳴ったって、そんなの当り前じゃないか。」
ただ、はっきりと言えることがロインにはあった。“仕方がない”その言葉で全てを片付けて欲しくない。そんな気持ちだ。彼女にとって大切な人だったから猶のこと、沸き起こる感情があるのは当然。自分だってそうだ。だから、その気持ちは大事にして欲しい。そして、その後は。
自分の考えを伝えるように、ロインは言葉にした。
「俺はもう、アイツのこと、アイツが親父にしたこと、許してる。」
ま、腹立たしいのは今でも変わらねぇけどな。と言いながら豪快に笑った。
憎いからって何も怒り続けなくてもいい。許しても、憎いモノは憎い。
それでも何が違うのかはきっと、自分がちゃんと相手を認められるようになれたかどうかだ。
「許してくれって俺から催促するのは変だけどさ。許してくれるだけで、十分すぎるんだぜ。」
照れ隠しでぐしゃぐしゃとクレアの頭を撫で回す。あとちゃんと髪を指で梳き直すと、手のひらでクレアの両頬を優しく挟んだ。
「有り難う、な。」
真剣な眼差しと共に、ゆっくりとロインは顔を近づけ、唇でクレアの顔に触れる。本当は…唇に重ね合わせたかったけれど、流石にそいつはやり過ぎだと思って敢えてずらした。
思った以上にクレアの頬っぺたは柔らかかった。
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お待たせしました。ロインは調子こいてます。
涙目を浮かべる私にロインは笑いかかる。もう彼をクロードと重ねることはなかった。私の中で、ロインはロインで。クロードはクロードだ。
「……ただいま。」
か細く伝えたその後に、もう一度噛み締めるようにロインに微笑みながら伝える。
「ただいま。…ロイン。」
それから私はロインに村を出てからの出来事を話した。気づいたら森の中を歩いていたこと。野獣に襲われそうになったところをリドーに助けてもらったこと。熱を出し、リドーのもとで療養していたこと。そして、クロードが生きていることを。
「ロインがしたこと、最初からずっと怒ってないよ。…仕方なかったんだよ、こうなることは。私の探していた大事な人が、ロインの仇だっただけ、…ただ、それだけ。 …ごめんね、あの時…怒鳴ってしまって。」
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遅くなってすみません、、!
明日も一つの方返します!
ああ。なんで、こうも敵わねえんだろうな。クレアの顔を見て無条件に安心する自分がいる。そばにいるだけで、その存在があるだけで、自分を、自信を取り戻せる。
いつの間に…俺はこいつのことがこんなにも好きになっちまったんだろう。
笑おうとして、変に歪んで泣きそうになった。もっと早くに出会えていれば、あんな奴(クロード)ではなく、自分が隣に並んで立って、ずっと先まで共に歩んで行けただろうに。
項垂れたままなのをいいことに、ロインはクレアに近づいた。そして。
「おかえり。」
ロインはそっとクレアを抱き締めた。軽く鼻先をクレアの首筋に埋めるととてもいい匂いがした。
耳元で囁いた声は、ともすれば震えそうだったが、懸命に堪えて気丈に明るく発したつもりだ。そして、照れながらにやけた顔でロインはクレアを真正面から見て、少しふざけ気味に言った。
「あのさ。『ごめん』とか『あの、その』よりも、まずは『ただいま』じゃね?」
そう言ってほしい。クレアの口からちゃんとそう、言葉にして欲しいとロインは願った。
「ロイン!!」
慌てて向かうと、そこには床に転がっている彼の姿があった。すぐに駆け寄り、膝をつきながら上から彼の頬を両手で包む。そして上から彼の顔を覗き込んだ。
「どっか痛いの?!大丈夫?!………っ!」
彼と喧嘩していたことなどすっかり忘れており、我に返ってハッとする。彼と目が合い、すぐに手をどかした。そして一定の距離まで後ろに下がる。
「ごめん、気安く…っ」
俯きながら反省したようにうなだれていた。勝手に村から姿を消して、その間村の手伝いもできずにいたこと。戦後まもなく、居場所がない私をここに置いてくれていたにもかかわらず、…あの日キゾンから逃げてきた私を助けてくれたにもかかわらず。
「…あの、…その…っ」
たった3文字の謝罪の言葉が、怖くて言えなかった。
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遅くなってしまってすみません(..)
片方も今日中にお返事します
「………。」
何度も途中手が止まる。その度に逃げ出すか、どこかへ隠れたい衝動に駆られていた。
あの時はちゃんと心に決めて話した筈だった。だのに今は、責められるんじゃないか、大っ嫌いと見下りを叩きつ付けられるんじゃないかと、不安に押し潰されそうになる。
再び止まった手に、ロインは勢いよく立ち上がってクローゼットに潜り込もうとした。勿論入れる訳がない。渋々机に戻っては、ダッシュでベッドの下に行き、這い蹲る。そして考え直して立ち上がれば、また窓から外へ飛び出そうとする。
「うわあああああっ!!」
どうにもならず、ロインは頭を抱え込んだ。幸いなのは今ここにいるのが自分だけ、だという事だ。こんな妙ちくりんな醜態を他人の目に晒さずに済んでる事だけが、ある意味ロインの救いであった。本当にもうどうしたらいいか分からなさ過ぎて、床でゴロゴロと転がり続けてしまう。これなら子供が地面で手足をバタつかせ駄々をこねる方がマシかもしれない。
誰かーっ!! 教えてくれーっ!!
大声で叫びたいものの、醜態を曝したくはないし、兄貴に相談もできないし。アヨルには絶対「ガキんちょだ」ってバカにされるに決まってるし。もう本当にどうしたらいいんだっ、俺は!!!!
そんな訳で、ロインはたった一人で小屋の中を転げ回っていた。
___________
遅くなって申し訳ございません
「………。」
何度も途中手が止まる。その度に逃げ出すか、どこかへ隠れたい衝動に駆られていた。
あの時はちゃんと心に決めて話した筈だった。だのに今は、責められるんじゃないか、大っ嫌いと見下りを叩きつ付けられるんじゃないかと、不安に押し潰されそうになる。
再び止まった手に、ロインは勢いよく立ち上がってクローゼットに潜り込もうとした。勿論入れる訳がない。渋々机に戻っては、ダッシュでベッドの下に行き、這い蹲る。そして考え直して立ち上がれば、また窓から外へ飛び出そうとする。
「うわあああああっ!!」
どうにもならず、ロインは頭を抱え込んだ。幸いなのは今ここにいるのが自分だけ、だという事だ。こんな妙ちくりんな醜態を他人の目に晒さずに済んでる事だけが、ある意味ロインの救いであった。本当にもうどうしたらいいか分からなさ過ぎて、床でゴロゴロと転がり続けてしまう。これなら子供が地面で手足をバタつかせ駄々をこねる方がマシかもしれない。
誰かーっ!! 教えてくれーっ!!
大声で叫びたいものの、醜態を曝したくはないし、兄貴に相談もできないし。アヨルには絶対「ガキんちょだ」ってバカにされるに決まってるし。もう本当にどうしたらいいんだっ、俺は!!!!
そんな訳で、ロインはたった一人で小屋の中を転げ回っていた。
朝方、馬車でリドーと共に村へ向かう。村に戻るのは1週間半ぶりくらいか。誰にも言わずに出てきてしまったものだから、不安な気持ちでいっぱいだった。それを見兼ねたリドーが”大丈夫”と一言だけ添えてくれた。
一番の不安はロインだった。一番気に掛けてくれて、傍にいてくれて。あの日もきっと、言いたくなかったと思う。それでも勇気を出して伝えてくれたにもかかわらず、私は酷い言葉を言いかけ、彼の勇気に報いれない態度を取ってしまった。喧嘩別れしたまま、私は彼との時間が止まったままだ。…クロードと、同じように。
しばらくすると馬車が止まった。村に着いたようだ。リドーが先に降り、私を誘導する。馬車から降りて、村の光景を目にする。変わらない姿だった。それぞれがそれぞれの作業をしていた。
その時、一人の少年がこちらを見て指差しをする。「帰ってきた!!」と。
その声に反応した他の人達がこちらを見る。リドーと私を交互に見つめて、安心した様子を浮かべてこちらに歩み寄ってきた。皆、事情を知っているようだった。
”良かった無事で…!” ”心配だったけど、リドー君がいればねって、皆で話してたの” そう声を掛けてくれるところを、苦笑いしか浮かべられなかった。そして1人がこういった。
”ロインは小屋で休んでるよ”
その言葉を聞き、私はゆっくりと彼らから離れて小屋へ向かった。どんな表情をしていいか分からない。不安しかない。けれど、彼に会わなきゃいけないと思った。
「わかった。ロインには伝えておくよ。クロードは…時間調整が必要だと思うから、もう暫く待って貰えるかな。」
そう言いながら、脱げた布団をクレアの肩にかけた。
「まずはきちんと体力を回復して。それから村へは僕が送るよ。」
もう寝なさいとクレアに促す。どのみちクロードが戻ってきたのなら、今の野暮な仕事からリドーも解放されるだろう。そうなれば時間の余裕も持てるだろうし、思っていたよりも早く村に戻れる可能性だって出てくる。リドーにとって万々歳だ。
「じゃあ僕は仕事に戻るよ。何かあったらカーナに伝えてくれればいいから。」
そう言って、リドーは立ち上がるとテントを後にした。
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お待たせ致しました。短くて済みません。
この後時間を進めていただいて構いません。クロードが復帰後は、リドーの護衛任務は終了します。
このまま暫く養生するもよし。ロインと仲直りしに村に戻ったもよし。村に戻る為の旅立つ所からでもよし。です。(←3番目のは、クロードとのニアミスイベントなんかできそうですね)
「…ロインのことは、怒っていません。彼は私の命の恩人でもありますから…。それにクロードが生きてるなら、私はもう、彼を憎むことはありません。むしろ、私が謝らなきゃ。…勝手に村を出てきちゃったから。」
少し目線を下にしながら、反省しているように落ち着いたトーンで話す。先ほどの口の聞かない様子とは一変して、元に戻ったようだった。
「ちゃんと村に戻ってロインと話したい。その後、クロードに会わせてくれませんか? 私、クロードを置いてベレアンに来てしまったから…私から、あの人に会いに行きたい。きっと…待っててくれてると、思うから。」
正直自信がない。彼が私のことを待っててくれるかどうかは。でも、約束したこと、彼が私にくれた博愛、そして元気でいることに安心しているのであれば。きっと。
「ロインが彼を『仇だ』と言っていた事は知っているよね。」
確認するように、彼女に話しかける。それからゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「僕達の父親は、彼に殺された。生憎だがこれは事実だ。ただ誤解しないで欲しい。戦争の中で敵味方となれば、殺し合う結果になるのは必然だと僕は思っているから。恨みが無いといえば嘘になるけれど、結果としては認めているんだよ。」
淡々と、できる限り穏やかに、調子を変える事なくリドーは話を続けた。クレアがどう感じ、どう思うかは彼女自身の問題だ。
「ただ、僕はその時の状況を詳細に弟妹に話してしまった。」
本当は、戦争が終わるか落ち着いてから、ゆっくりと言葉を選んで話せばよかった。気が動転していたのは否めないし、長兄としてそれでも考慮すべきだったと、今は思う。
「二人の前で顛末を話した所為で、弟にはちゃんと悲しむ余裕を与えてやれなかった。泣き出すアヨルを宥めるのを優先してしまったんでね。…その分、あいつは憎悪に感情を走らせてしまったんだと…思う。あいつの性格も考えてやれていれば、こうなる事はきっと避けられた。」
父親の最期の瞬間を目の当たりにして、遠くから見ているしか出来なかった自分自身、精神を保つのは容易じゃなかった。それでもその衝撃を弟に半分肩代わりさせてしまったことが、この結果を招いたと悔いている。
「弟のやってしまった事を、許してくれ、と言えた義理じゃないけれど。どうかせめてあいつの心情を、少しでもいいから汲んでは貰えないだろうか。…そして、僕からもクロードに傷を負わせた事、改めて謝罪します。」
頼み込むようにリドーは頭を下げた。最終的に決めるのはクレアである。弟の為に出来る限りの力添えになる事を願って、彼女に訴えた。
実質、弟の恋が実る確率は限りなく低い。それでもチャンスがあるなら掛けれるだけの手は打ってやりたいという兄弟心で顔を上げる
「クレアさん。起こってしまった過去は変えられない。けれどこれから先の未来は自分達の手で作り出せる。責める気持ちがあるなら、もう二度と繰り返さない為に、顔を上げて前を向いて欲しい。過去に囚われ続けるのではなくて、ね。」
そうリドーはクレアを諭す様に言った
すぐにでも会いたい、会いたいのに…会う勇気が出ない。あんな別れ方をして、かなり時間も経っていて。お互いに生きていることを知るすべがなかったから、こうして今、偶然的にも彼を知っている人物と出会っている。それでもどんな風に彼と会っていいのか、不安の種が生まれた。
一方、事の次第を知っているリドーがロインについて、教えてくれるという。アヨルからも事情を聞いていたつもりだが、他にも何かあるのだろうか。
私はキョトンとした表情で彼を見つめることしかできなかった。
「クレアさん。まず、これだけははっきり言っておく。クロード・シーバックは生きている。彼は今、この駐屯地にいる。」
強い語調でリドーはクレアに言った。事実だし。第一しつこく、彼が『死んだ』などと吹聴されても困る。その上で、今度は少し落ち着いた口調で彼女に語り掛けた。
「もう一つ。言わせて貰えば、彼は感謝していたんだよ。貴女が元気でいる事に。それに、彼の腕の事は毒霧大戦での罪価だと聞いている。」
戦争後、初めてロインと出会ったあの日。ロインはリドーにクレアの事も話していた。クロードが二人に近づいたのも、考えてみればクレアの名前が聞こえてきたからかもしれない。リドー自身、クロードが戦犯の刑を終えて同じくベハレスコの復興に従事している話を耳にした当初は複雑な心境でいた。が、顔を合わす事も無かったので、直接顔を見るまでは忘れていた位だ。
その後、色々あってクロードの代わりを務める事になってから、彼の為人を否が応にも知り、より複雑な感情を抱く羽目になったんだが。
「今から話す事は、貴女にとって酷い内容かもしれないから、僕の独り言だと思って聞き流してくれていい。でも、どうか自分自身や…ロインを責めたりしないでくれるかな。」
出来るだけ穏やかに、リドーはクレアに笑い掛けた。ただ、本当は誰に責任があるかを捜し出しても無意味だと、客観的には思っていた。誰にも責任はあるし、ある意味皆被害者であり加害者だ。戦争、という大きな流れの中で生きる限り、それは免れない問題だと。
そう思うが故の告白である。
「ロインにあそこまでの憎しみを、(クロードに対して)持たせてしまったのは、僕なんだ。」
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リドーの告白は長くなるので、一旦この時点で切ってみますね。(次のロルで書くつもりです)
「あの人は!!」
ガバっと布団から身体を起こした。否定したかった。彼はそんな人じゃないんだと、ただただ否定したかった。
「…あの人は、そんな名前で恐れられるような、…怖い人じゃないっ… とっても優しくて、不器用で…、…温かい、人だから…っ 」
溢れ出す涙と同じように、感情が溢れて、辛くて仕方がなかった。
「…ロインが、あの人と会ったって聞いたの。片腕が動かなくなってたことも、生きているか分からないことも、全部聞いた。…私、ずっと何も知らなかった。知らないで、…いつかきっと、会えるって。それまで元気でいようって…っ だけど、間違ってた。…ロインが手を上げたから、じゃない。…私が、…私がクロードを傷つけて、逃げなければ。…キゾンに戻るクロードを、強引にでも2人でもっと遠くに逃げていたら…!クロードは、片腕を失わずに済んだの!今も元気で、生きてたはず…なの…っ 私が、私があの人から何もかも、…奪ったの…っ 絶対、私のこと恨んでるから、…大嫌いになっちゃった、はずだから…っ」
幼い言葉遣いに、涙をボロボロと流した。
「あの人は!!」
ガバっと布団から身体を起こした。否定したかった。彼はそんな人じゃないんだと、ただただ否定したかった。
「…あの人は、そんな名前で恐れられるような、…怖い人じゃないっ… とっても優しくて、不器用で…、…温かい、人だから…っ 」
溢れ出す涙と同じように、感情が溢れて、辛くて仕方がなかった。
「…ロインが、あの人と会ったって聞いたの。片腕が動かなくなってたことも、生きているか分からないことも、全部聞いた。…私、ずっと何も知らなかった。知らないで、…いつかきっと、会えるって。それまで元気でいようって…っ だけど、間違ってた。…ロインが手を上げたから、じゃない。…私が、…私がクロードを傷つけて、逃げなければ。…キゾンに戻るクロードを、強引にでも2人でもっと遠くに逃げていたら…!クロードは、片腕を失わずに済んだの!今も元気で、生きてたはず…なの…っ」
「クレア・ロバーツさん。貴女の事情は少なからず弟のロインから聞いている。妹のアヨルが行方不明になった時に必死で探してくれた事も、キゾン兵を前に暴走しかけたロインを体を張って止めくれた事も、貴女が以前キゾン王国にいた事も、僕は知っています。」
出来るだけゆっくりと、語り聞かせるようにリドーは話した。弱っている精神がまだ混乱を来たしている、とリドーは考えていた。それで確かめるべくクレアに問いかける。
「クレアさん。貴女が言ってる“クロード”という人物は、“キゾンの氷鷹”と謂われたキゾン王国騎士団長の一人、クロード・シーバックで間違いないですか?」
洪水後のアヨルが大怪我を負った時の話もロイン伝で把握している。あの時ロインが暴走したが、大事になる前に相手の兵士が自腕を盾に弟の刃を防ぎ、気絶させて収めた話も、彼がどうやら騎士であった事や、別れる前にクレアと何かやり取りをしていた事、それ以後クレアが肌身離さず持っていた短刀が見当たらない事、短刀にアヨルの御守りと同じ紋章の刻まれていた事、等々。
しかも、その短刀がどういう訳かクロード・シーバックの手元にあった。ロインが刺した後に本人の懐から転げ落ちて、ロインが信じられない位に動揺し、その理由も訊いたから、それがクレアの持っていた短刀で間違いない。
リドーはじっと、クレアの瞳を見つめ、彼女が答えるのを待った。
ダリルはクレアの姿を見て、ため息をつく。全く何も話す気は無さそうに見える。きっとカーナとも何も話せていないのだろう。何を頑なに拒んでいるのか、何故、そんな切ない表情を浮かべるのか。しかしふと、その表情が先ほどのクロードの表情と重なって見えた。彼もまた、彼女の名前を聞いて同じような表情を浮かべていた。
「…ちょっとだけ、待ってくれ。」
そうリドーに声を掛けると、ダリルはクレアに近づいた。
「…クロードは、あんたの名前を知っていたよ。クレア・ロバーツ。」
その言葉を聞き、クレアは目を見開いた。辛そうなまま、一点を見つめていた。ダリルは続けようとしたが、これ以上何も言えない気がして口を閉じた。そして立ち上がり、リドーにその場を譲る。
「…さぁ、どうぞ?」
そう言ってダリルが部屋を後にしようとしたとき、「もう、やめて」とか細い声が聞こえる。クレアが零した言葉だった。
「生きてる、はずがない。…覚えてる、わけない。…私があの時、見殺しにしたから。生きてまた会おうだなんて、…馬鹿げた約束を、勝手に信じて。必ず会いに行くなんて、探しにさえしてなくて。誰でもない、…私が、あの人を殺した。」
彼女は何を言っているんだ、クロードは生きている。…もしかして俺が知っているクロードと別人なのか?彼女に問いかけようとしたが、リドーと目が合い、封じされた。俺はそのまま部屋を出ることしかできなかった。
丁度ダリル達も戻ってきたので、一旦洗濯に出す服や替えの着替えを取りに席を離れる。すれ違い様にダリルからアイコンタクトで元気を貰って、カーナはテントの外へ出た。
リドーはクレアを一瞥すると、小声でダリルに話しかける。
「悪いがもう一度、彼女と二人だけで話をさせてもらえないですか。」
多分ダリルが自分を呼んだのは、先刻のやり取りの内容を確認したかったからだろう。けれど実際、あまり詳しく話たくない。どうやら彼もクロードの事は知っているようだった。なのでいずれはバレる話かもしれないが、ロインを巻き込んでのゴタゴタをこれ以上広げたくないのだ。
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クレア様とのお話は、後でも先でも大丈夫です。ダリル様に先刻の件を話してからでも良いですよ。
「…悪い、何でもない。…キゾンの知り合いにベレアンの女を紹介してくれ!…なんて、言われてたもんで…、ちょっと聞いてみただけなんだ。…勿論、カーナは紹介したくない、…しな。」
少し恥ずかしそうに言いながら、かなり大雑把な台詞を叩いてみせた。
「俺はカーナのところへ戻る、…お前も来てくれ。」
そう言ってリドーに声を掛けた。
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身体の火照りと関節痛はだいぶなくなってきた。やはり薬がよく聞いているのだろう。ただ、心は凍ったままだった。せっせと看病をしてくれる少女に感謝を伝えることさえも、気持ちが拒んでいた。
”クロードは生きている。彼は、生きているよ。”
その言葉が頭の中で繰り返された。繰り返される度に、心が凍っていくように沈んでいく。信用できなかった。私の気持ちを安心させようと、心をこじ開けようと嘘を付かれているような心地になって。本当は存在しない希望を抱かせられているような気がして。彼を思い出すたびに、素敵な思い出であればあるほど、思い出すことさえ苦痛だった。…彼を忘れられるなら、どれだけ楽だろう。
”生きてまた会おう”
「…あんな約束、…しなきゃよかった」
乾ききった瞳から一粒の涙をこぼして、か細く呟いた。
___________________________
遅くなってすみません、、もう一つは夜返しますね
だが遮るようにリドーがダリルの言葉を補足する。
「クレア・ロバーツ。知ってますか。」
尋ねるような物言いだが、その目つきは『(お前は)当然知っている』と断定する鋭さだった。その強さに、すぐにはクロードも返答できずに息を飲む。
「…ああ。知っている。」
その気迫の理由がわからず、クロードは一先ずそう答えた。
「貴方に起因する心労が原因で、彼女は今体調を崩してましてね。」
淡々とした口調でリドーは言った。だから彼女に近づくな、と口では言わぬものの、眼差しは強くクロードを非難する。
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こちらも短くて恐縮です。
なんかダリル様に二人のドンパチの処理を丸投げしてしまって申し訳ないです。
クレア様の様子がもう少しわかれば、後日クレア様に陰からクロードの姿を覗き見る方向に、近々持っていこうかと存じます。
すると隣でリドーが珍しく険しい表情でクロードを見つめていた。火花が散る音が聞こえる。一体何があったかは分からないが、想像してみたら容易だった。単純に彼らの性格は合わないだろう。
「…久しいな、」
俺は一度彼と理解し合えたと思っている。戦争の真っただ中、俺らの敗北が決まったあの瞬間に。忘れるはずもない。だからこそ、敵対心は沸かなかった。
「…ちょうどよかった、お前に聞きたいことがあったんだ。」
不思議そうな表情を浮かべ、こちらを見つめるクロードに口を開く。
「お前、…ベレアン出身の、女の知り合いがいたりするか? 勿論、カーナ以外に。」
クロードはゆっくりと話している二人に近づいた。両方とも気付いたらしく此方を見てくる。それでもう一人がリドーであると気付いた。こうして二人が普通に居る事を考えれば、罪に問われずに済んだとみてもいいのだろう。少しばかりクロードは胸を撫で下ろし、再度二人に近づいた。リドーとは1カ月ぶりだが、ダリルは果たして覚えているだろうか。
一瞬足を止めたクロードに険しい目をしたまま、リドーは先程の質問の答えをダリルに返す。
「彼、がそうです。」
同僚扱いになっているが。復興に従事した当初は黒く髪を染めていた。騎士団長だった頃は随分厳しかった様だが、比べて今は随分柔和で、あの髪の色が無ければ気づかない人間も多いようだ。実際、リドー自身がそうだった。動かない腕の理由を聞いてなければ、彼が何故髪を染めていたのかさえも分からなかったが。
あの『キゾンの氷鷹』だから、ベレアン民の前で蒼銀髪を晒す訳にいかなかった。
「髪は染めなくて良いんですか。クロード。」
「ああ。後で染め直すつもりだ。」
そう言って笑うクロードを何処となくリドーは冷やかに見つめた。
-------
ダリル様にとって 「お前の同僚に、同じ名前の男が…」=『キゾンの氷鷹』なのかがわからなかったので。ひとまず元の髪色のままで向かわせています。(多分誰が見ても『キゾンの氷鷹』)
俺はリドーのもとへ駆け寄る。寝ている彼女の様子を聞かれたため、ざっくりと説明した。
「熱はある。安静にさせて、様子見ってところだ。…目は覚めたが、何も話してくれない。こちらを警戒しているよう…に見えたが。…なぁ、あの子は誰だ?」
そうリドーに問う。その答えをリドーは教えてくれた。彼女は自分の弟と村で暮らしているベレアンの人間であること。弟から彼女がいなくなったと連絡を受け、救助の支援に向かっていたところ野獣に襲われ駆けている彼女を見つけたという。リドーにとっては顔見知り程度の女性であることを教えてもらった。どうして突然いなくなったのか、雨の中一人でいたのか。それは本人に聞くしかないだろう。
「…とりあえず、経緯は分かった。…それから、知っていたら…だが。あの子、クロードという人間を探しているようだった。生きているのか、また会えるのかと…。人違いならいいんだ、あの、…お前の同僚に、同じ名前の男が…」
その時、俺の名前が呼ばれる。振り返ればそこに、クロードの姿があった。
少なくとも、ダリルにはちゃんとした話をしておかなくてはいけない。リドー自身、クロードと直接面合わせをしたのはあのロインガ起こした騒動の時だが、恐らくダリルもクロードとは顔を合わせている。あれだけ牢内に声が響いていたのだから。
まあ、クレアとクロードの関係は知らないだろうし、今のクレアの精神状態を考えると、彼女の前では余計な話はしないよう注意しておかないと。
表情には出さないものの、色々と思案しながら一旦宿舎から外へと出る。そしてダリルが来るのを待った。
-------
ひとまずクレア様のことはカーナに任せる形で、ダリル様にはリドーと直接話して頂く方が良いかと思っております。
クロードは登場しますが、まだこの時点ではクレア様に会わせるつもりはございませんので、安心して下さい。←リドーが阻止します。
一応、リドーと二人で話している所へクロードが現れるという想定をしております。
(クロードのログも相談板に入れてますので、良かったら参考にしてみてください)
*クロードの時間軸は、二人の話が大体終わった頃で想定してます。
少なくとも、ダリルにはちゃんとした話をしておかなくてはいけない。リドー自身、クロードと直接面合わせをしたのはあのロインガ起こした騒動の時だが、恐らくダリルもクロードとは顔を合わせている。あれだけ牢内に声が響いていたのだから。
まあ、クレアとクロードの関係は知らないだろうし、今のクレアの精神状態を考えると、彼女の前では余計な話はしないよう注意しておかないと。
表情には出さないものの、色々と思案しながら一旦宿舎から外へと出る。そしてダリルが来るのを待った。
-------
ひとまずクレア様のことはカーナに任せる形で、ダリル様にはリドーと直接話して頂く方が良いかと思っております。
クロードは登場しますが、まだこの時点ではクレア様に会わせるつもりはございませんので、安心して下さい。←リドーが阻止します。
一応、リドーと二人で話している所へクロードが現れるという想定をしております。
(クロードのログも相談板に入れてますので、良かったら参考にしてみてください)
ぼんやりと目の前の景色を認識するのに数秒かかってしまった。薄っすら目を開ける。身体は火照り、熱があるのが自分でもわかった。しかし額に置かれている濡れたタオルのおかげで苦しさはだいぶ紛らわれていた。悪寒も何重にも掛けられているブランケットのおかげで抑制されていた。
「…目、覚めたか?」
隣から聞こえてきた声に目線だけ送る。そこには見慣れない男女の姿があった。男性の後ろに隠れるようにしながらこちらを見つめる女性を見て、この人たちは悪い人ではないと直感的に思った。一体誰なのか、声を出して問いたいところだったが、口が鉛のように重く開かない。沈んだ心がそうさせているようだった。
「…ここはベレアン中央区の市街地だ。安心しろ、君に危害を加えたりはしない。…具合は大丈夫か?」
落ち着いたトーンで男性から声を掛けられる。しかし答える気になれず視線を逸らした。態度が悪いことは十分承知の上だ。ただ今は何も答えたくなかった。蝕まれる不調と固く閉ざされた心でいっぱいいっぱいだった。
ダリルは呆れた表情を浮かべる。彼女が気を失うように眠る前に聞いた”クロード”という名前。俺の知っている人間と同一人物なのだろうか。しかし彼女はベレアン国の人間。それは容姿の系統と着ていた服で分かった。キゾン国のクロードと接点があるようには思えない。
「…クロードと、知り合いなのか?」
その言葉に一瞬反応した様子に見えたが、彼女は何も口を開かなかった。これはリドーを待つしかないのだろうか。後ろで困惑するカーナと目を合わせ、どうしたものかと首を傾げた。
「きっと生きてるわ。だから絶対に会える。」
都合よく解釈してクレアにそう声掛けをした。
その頃ロインは黙々と作業をしていた。できる限りいつもと変わらぬように装いながら。けれど内心そうはいかない。口数が減る中、漸く兄貴からの返信が上空を横切っていく。咄嗟にロインは道具を放り出して、後を追いかけた。
戻ってきた小鷹が掴んでいたカプセルには、「カクホ」と書かれた紙切れが入っていた。併せて女性を示す記号とキゾン王国の簡易紋章も記されている。それを見て、恐らくは理解してくれたとロインは胸を撫で下ろし、肩の力を抜く。ちゃんと兄貴がクレアを助けてくれたんなら、心配はない。詳しいことは何一つわからないが、いずれ近い内に会いに行けば様子がわかるだろう。
今は…そっとしておこうと、小鷹に餌を与えてヨイコラショと重かった腰をあげた。
リドーが戻ってきたことでダリルはテントに戻ってきた。帰ってきたリドーからカーナに仕事を任せていると聞き、どうすればいいのか困っているんじゃないかと手を貸しにやって来たところだった。すると横たわりぐったりしている女性が目に入り、驚く。リドーが任せた仕事というのは彼女の救護だろうか。
「彼女は?」
着替え挟んでおり、まだ残っている顔や髪の毛の汚れを拭いているカーナに問う。彼女も良くわかっていないようだった。リドーが運んできたと、それだけ。つまり彼女は謎の人物、ということになる。全く見覚えのない顔だった。俺は彼女の首元に手を当てる。
「……熱がある、呼吸も荒いな。…冷やした布と、余っているブランケットを持って来てくれ。」
カーナにそう指示したその時、クレアが口を開く。
「……クロー…ド…」
「ん?クロード?」
「クロード…生き、…てる…?……また、…あえ、る…?」
弱々しく言葉を漏らした。
緊張した状態から気持ちも解れて仲間がいる駐屯地まで戻ると、リドーはまずカーナを探し出し、馬を降りた。
「カーナ! 手伝ってくれ!」
いきなり名前を呼ばれたカーナはびっくりして、呼ばれた方に振り返った。見るとリドーが女性を抱いて此方へ歩いてくる。途中で抜けたと思ったらの…この状況に、怒るよりも驚きの方が勝ってしまって、ポカンと口を開いていた。
「少し体力を遣いすぎたんだと思う。ゆっくり休ませれば回復するだろうから、後は頼めるか?」
「いいけど…、」
どうすればいいのか、戸惑うカーナに笑ってリドーは指示を出した。
「取り敢えず、服を着替えさせてやってくれ。結構濡れてしまってね。」
こうだ、という道筋さえあればちゃんとやり通すバイタリティはあるカーナだけれども。咄嗟の判断や応用が利かない弱点は相変わらずだな、と苦笑いを浮かべた。
そうしてクレアを彼女に託し、リドーは馬を返すのと弟に連絡を入れる為にその場を後にする。託されたカーナはひとまず宿舎になっているテントへ、どうにかクレアを担いで移動した。
ひとまず部屋でクレアの体を横たえらせる。濡れた服を着替えさせようとして手をかけたカーナは、クレアの体が随分冷えている事に気が付いた。その割に顔やおでこはひどく熱い。髪も体も結構汚れてるみたいだし、本当はお風呂に入れてあげた方がいいかも、なんだけれど。
実際地面に倒れた時の泥や土が顔にまだ付いていて、髪も同じくべとついていた。
「ねえ、しっかりして。もう大丈夫だから…」
湯に浸して温めた布で、軽くクレアの顔を拭っていく。何が何だかわからないまま、カーナはクレアに声を掛けつつ、全身をゆっくりと拭いていった。
-------
風邪っぴきじゃあお風呂はダメですね。。。
「……ロ、…インの… お、…お兄…様……っ…」
振り絞って発せられた回答は雨音でかき消されてもおかしくない程のか細い声だった。ゆっくりと頷くリドーを見て、光の戻った瞳から大粒の涙を流し始めた。転んで泥だらけになった頬に涙が伝っていき、痕を残す。無意識に乱れた呼吸を整えようと身体が働き始めていた。それから、まるで子供のような泣き顔で口を開き始めた。
「クロードの…こと、…知ってる、の? …クロードは、…生きて、るの…? 全部、…本…」
その時、何とか保たれていた意識がぷつっと切れた。激しい頭痛と眩暈に自分で身体を支えられなくなり、リドーの方に身体が倒れる。リドーが強い力で肩を掴んでいるおかげで地面に倒れていない。半分意識のない状態だった。
「……ロ、…インの… お、…お兄…様……っ…」
振り絞って発せられた回答は雨音でかき消されてもおかしくない程のか細い声だった。ゆっくりと頷くリドーを見て、光の戻った瞳から大粒の涙を流し始めた。転んで泥だらけになった頬に涙が伝っていき、痕を残す。無意識に乱れた呼吸を整えようと身体が働き始めていた。それから、まるで子供のような泣き顔で口を開き始めた。
「クロードの…こと、…知ってる、の? …クロードは、…生きて、るの…? 全部、…本…」
その時、何とか保たれていた意識がぷつっと切れた。そしてリドーの方に身体が倒れる。リドーが強い力で肩を掴んでいるおかげで地面に倒れていない。気を失ったわけではないが、意識は先ほどよりも薄れていた。
「クロードは生きている。彼は、生きているよ。」
クレアの両肩を簡単に振り解けないような強さで支え、リドーは言い聞かせるように彼女に耳元へ囁いた。まずは落ち着かせるのが先だ。その為にリドーは彼女に自分の事を認識して貰わねばならないと、腰を落ち着かせる。
「僕が誰だかわかるかい。クレア・ロバーツ?」
今度はちゃんと彼女の眼を見て話す。フルネームはうろ覚えだったが、多分合っている筈だ。リドーは真っすぐにクレアを見つめ、彼女が目を逸らせたり顔を背けるのを拒んだ。
彼女の体調の悪さやまだ周辺に屯しているであろう野獣の事を考えると、できる限り早く街まで戻るに越したことはないのだから。それを踏まえ、馬に乗せる前にある程度認知させておきたい。
こうして直接話すのはほぼ初めてだが、先の会合の際の様子やロインから聞いていた話で、リドーはクレアの強さを信じられた。だから今の状況を絶対に乗り越えられる。
---------
一応馬の上で暴れられても困るので。「ロインじゃない」という認識の確認ができ次第、意識白濁状態(であろう)クレア様を街のお風呂までお運びします。お風呂の中はカーナがお世話します。
短いですが、どうぞ宜しくお願いします。
※ なお、ココも短いロルでも大丈夫ですよ
しばらくして、逃げ切れたのか速度が遅くなる。覆われていた頭も解放され、相手を確認することができた。しかし私は見間違えていた。混濁した意識のせいで、彼をロインと見間違えてしまった。
「!?……触らないで!!」
そうリドーを払い退ける。その反動で彼が私を手放してくれたおかげで地面に着地できた。しかし、自力で立ち上がる気力と体力は残っていなかった。その場で、まるで悪霊に取りつかれたかのように言葉を吐き散らかした。
「私なんか助けるなら!!クロードを助けてよ!!クロードを!!…殺さない、でよ…っ 」
その言葉を吐き切ると、途端に激しい動悸と吐き気、頭痛に襲われる。乱れた呼吸をし始め、その場から動けなくなってしまった。
_______________________________
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
雨の中、高ストレスの状態で森を彷徨っていたので本人の気付かないうちに風邪をひいてしまったようです。リドー様、カーナ様での救護をどうかよろしくお願いいたします。
リドーはクレアを担ぎ上げつつ、指示をするように声をかけた。
「目を閉じて口鼻を覆って。」
言うと同時に先程と同じ忌避剤の入った球を地面に叩き付けて割る。その立ち上る煙を纏わせる様に浴びると、彼女を担いだまま再び走り出した。
雨なのは分が悪い。できる限り早く木々を抜けないと。
ここは野獣達の領域である。彼らの嫌う臭いで距離を取るようにしているものの、湿気を帯びた空気では思うような効果は期待できない。リドーはクレアを気遣いながらも全速力で街道まで戻る。球を多用する手もあるが、刺激の強い物に変わりはない。目や喉などの粘膜に付けば、個人差はあれど炎症を起こすので、クレアの為にも数多くは使いたくないのだ。
あと一度だけ、地形的に野獣が回り込みやすい段差で忌避球を根幹に投げ付け、立ち上る煙に突っ込む。一応クレアの頭を覆うようにして、彼女の顔には掛からないようにリドーはその場を駆け抜けた。そのお陰か無事に野獣達を吹っ切ったようだった。
「いきなりでごめんよ。大丈夫かい?」
一息つけるのを確認して、リドーはクレアに声を掛けた。
---------
月並みですが、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
一先ず、クレア様確保、というところです。この後の予定として一旦ダリル隊の元に連れ帰るつもりでおります(リドー談) 弟ロインへの連絡は兄リドーがしますので、その点はご心配無く。
数日、ロインとは離れてクレア様に気持ちの整理をして頂けたらとリドーは考えておりますので、近々のロル展開はそんな感じになるかなと思ってます。(その間多分カーナが世話を焼きそうな・・・)
クロードとの引き合わせは、祭の開幕辺りとかになるかと考えてますが。その前にリドーからフェルマー家事情の告白をさせたいと望んでますので、暫しお付き合い願えれば幸いです。
調子に乗っていそうな彼女を上司として一喝する。しかし、周りの人間はニヤニヤと顔を綻ばせていた。その視線に注目もせず、俺は淡々と作業に努めた。別に浮かれて居ないわけではない。戦争が終わってから、気晴らしになりそうな行事など無かったからだ。その時間を有意義に過ごすためにも、…それを彼女と過ごすためにも、今は全力でタスクを片付ける。そう、燃えていた。
________________________________
村を出てからどれほど歩いたのだろう。今が何時なのか、朝なのか夜なのか分からない。目の前に広がっているのは変わらず木々たちだった。街の方へ歩いているはずなのに一向に辿り着かない。どこかで道を間違えたのだろうか。あんなにほぼ毎日といっていい程通い詰めていた場所の経路さえ、覚えていないなんて、情けない。
よろめく足元に木の根が引っかかる。耐えられるはずもなく、地面に倒れた。
頬の痛みと水溜まりを見て、やっと今、雨が降っていることに気が付く。空が暗いから、気づかなかったんだな。痛いと思った頬を手で覆う。その時また、思い出してしまった。
彼が私の殴られた頬に優しくキスをしてくれたことを。心配そうに見つめる彼の瞳がまた脳裏をよぎった。
「もうやめて…思い出したく、……ない…っ…」
冷たい雨の中、体温がどんどん奪われていく。今にも心臓が破裂しそうなほど苦しくて仕方ない。このまま雨と一緒に流れて楽になりたい。
雨の音と自分で精いっぱいだった。周りを野獣に囲まれていることなど、気づきもしなかった。
「頼んだぜ…、」
空高く飛んでいく小鷹を、祈るような思いでロインは見つめた。
その頃リドーは、いつもの詰所で仲間と共に作業していた。
「もうすぐ精礼祭なのよね。どれを着て行こうかな。」
実質デートのカーナ=フィレスは、まだ3週間は先の祭りが待ち切れずにウキウキしている。精霊の力を信仰するフーゴンでは最大ともいえる大祭だ。技巧の礎となる精霊に礼を尽くす祭であり、職人達にとっての直接的な売り出しの場である。行われる期間も1カ月と長い。
祭の規模と距離の近さから、かつてはベハレスコの住民もよく参加していた。此度戦争が終わったことと、復興に遵ずる全ての市民の労いと希望を込めて、ルアハ王女から特別に定額チケットが配られている。一定金額まで自由に買い物ができ、市街地同士を結ぶ送迎馬車まで無料で運行される、至れり尽くせりのサービスだ。
「ん?」
作業の合間に空を見上げれば、見覚えのある小鷹が飛んでいた。その動きは緊急連絡時の『保護』を示しているように思えた。『帰還』でもなく『退避』でもない。余程でない限り弟のロインがそんなものを飛ばしてくるとは思えない。
「悪いが急用で抜けます。」
手短に管理者にそう伝え、リドーは村に近い郊外へと馬を駆りて走らせた。
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精礼祭は、年末恒例蚤の市みたいなものと思っていただければ。クレア様回収まで至らず済みません。リドーが拾いに行きます。で、ダリル隊面々の元で保護する予定。
激しい頭痛が襲ってきて、呼吸がしづらくなった。泣き喚く声が遠く聞こえる中、この苦しみと、現実から目を背けたくて、感情を落ち着かせたくて、必死に思考を巡らせた。悶え苦しむその限界がやってきたのか、気がつくとピタッと泣き止み、身体を起こした。
「………食糧、調達…しないと。……村の家も、綺麗に…しなくちゃ。」
覚束無い足取りで歩き始める。ここから市街地なんて、酷く距離がある。馬を使うのが必須なはずなのに、私は馬小屋に寄ることもなく、真夜中にもかかわらず、街の方角に向かって歩き始めたのだった。意識はほぼない。光の宿らない瞳で街の方角だけ見つめていた。何も考えないように、いつもの行動をやろうとした結果だろう。
私は誰にも伝えることなく、村を離れて行った。
------------------------------------
一旦家出させてください…っ
それから可能ならリドー様にクレアを拾っていただけないでしょうか…?
彼女は現在、眠らないまま休憩も取らずに夜の森を歩き続けています。
どこでも構わないですが、リドー様にクレアを拾っていただき、
何かしらの形でクロードがちゃんと生きていることを伝えていただきたいです。
考えているのは、リドー様引率で遠くからクロード様の姿を見せてもらうか、
リドー様からクロード様が昔いた女性のこと(=クレアのこと)を聞いており、クロード様から聞いて話をクレアに聞かせるとかで、クレアを正気に戻して欲しいなと…
最終的にはクロード様に会いに行く前にちゃんと村に戻ってロイン様と和解させてください
激しい頭痛が襲ってきて、呼吸がしづらくなった。泣き喚く声が遠く聞こえる中、この苦しみと、現実から目を背けたくて、感情を落ち着かせたくて、必死に思考を巡らせた。悶え苦しむその限界がやってきたのか、気がつくとピタッと泣き止み、身体を起こした。
「………食糧、調達…しないと。……村の家も、綺麗に…しなくちゃ。」
覚束無い足取りで歩き始める。ここから市街地なんて、酷く距離がある。馬を使うのが必須なはずなのに、私は馬小屋に寄ることもなく、真夜中にもかかわらず、街の方角に向かって歩き始めたのだった。意識はほぼない。光の宿らない瞳で街の方角だけ見つめていた。何も考えないように、いつもの行動をやろうとした結果だろう。
私は誰にも伝えることなく、村を離れて行った。
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一旦家出させてください…っ
それから可能ならリドー様にクレアを拾っていただけないでしょうか…?
彼女は現在、眠らないまま休憩も取らずに夜の森を歩き続けています。
どこでも構わないですが、リドー様にクレアを拾っていただき、
何かしらの形でクロードがちゃんと生きていることを伝えていただきたいです。
考えているのは、リドー様引率で遠くからクロード様の姿を見せてもらうか、
リドー様からクロード様が昔いた女性のこと(=クレアのこと)を聞いており、クロード様から聞いて話をクレアに聞かせるとかで、クレアを正気に戻して欲しいなと…
最終的にはクロード様に会いに行く前にちゃんと村に戻ってロインと和解させてください
クレアの姿にロインはそれしか言えなかった。こうなることが分かっていたから…あの日街から帰ってきた時も、クレアの笑顔を見た瞬間言い出せなくなってしまった。
「よっぽどの事が無い限り、アイツは生きてるよ。刺すのに使った“イチコロ”っていう技はさ、相手を麻痺させて捕獲する技なんだ。エールボルドの村長が言ってたように、本当は魔獣相手に使ってた技で…」
勿論人間相手だって事をわかってて使用したんだし。その分の手加減もちゃんと取っている。それに刺した後の処置も、兄貴が的確にしてくれたお陰で「人間相手でも使えるんじゃねぇか!?」と俺が錯覚する程、順調に昏睡状態に陥ってくれたし。
余程の体調急変がない限り。誰かが勝手に危篤状態と勘違いして、変な薬や心臓マッサージなんかをしなければ。問題なんて起きる筈が無いんだ。
とはいえ。結局アレ以来ヤツの姿を見ていない上、兄貴にも「キゾンで療養する」という噂しか知らないと言われた。だから、今のロインには「絶対に生きてる」なんていう無責任で烏滸がましい事を、クレアに向かって言う度量は無い。
暫く口を噤んだまま、蹲るクレアをロインは見つめていた。自分がやった事に後悔が無いから更に性質が悪いんだ、と。ロインは自分で自身の性質に苦虫を噛み潰す。
「好きなだけ、泣けばいいよ。俺は先に戻るから、さ。」
このままクレアを一人にするのは、忍びない。だが、敢えて明るく声をかけると、ロインは踵を返した。
__________
ゆっくりサイル側を観ている余裕が無いので、ひとまず此方だけ
サイル自身は、ちゃんと(普通に)カイ様と話が出来るようにしたい、んです。(現在その準備中)
クレアの姿にロインはそれしか言えなかった。こうなることが分かっていたから…あの日街から帰ってきた時も、クレアの笑顔を見た瞬間言い出せなくなってしまった。
「よっぽどの事が無い限り、アイツは生きてるよ。刺すのに使った“イチコロ”っていう技はさ、相手を麻痺させて捕獲する技なんだ。エールボルドの村長が言ってたように、本当は魔獣相手に使ってた技で…」
勿論人間相手だって事をわかってて使用したんだし。その分の加減もちゃんと取っている。それに刺した後の処置も、兄貴が的確にしてくれたお陰で「人間相手でも使えるんじゃねぇか!?」と俺が錯覚する程、順調に昏睡状態に陥ってくれたし。
余程の体調急変がない限り。誰かが勝手に危篤状態と勘違いして、変な薬や心臓マッサージなんかをしなければ。問題なんて起きる筈が無いんだ。
とはいえ。結局アレ以来ヤツの姿を見ていない上、兄貴にも「キゾンで療養する」という噂しか知らないと言われた。だから、今のロインには「絶対に生きてる」なんていう無責任で烏滸がましい事を、クレアに向かって言う度量は無い。
暫く口を噤んだまま、蹲るクレアをロインは見つめていた。自分がやった事に後悔が無いから更に性質が悪いんだ、と。ロインは自分で自身の性質に苦虫を噛み潰す。
「好きなだけ、泣けばいいよ。俺は先に戻るから、さ。」
このままクレアを一人にするのは、忍びない。だが、敢えて明るく声をかけると、ロインは踵を返した。
__________
ゆっくりサイル側を観ている余裕が無いので、ひとまず此方だけ
サイル自身は、ちゃんと(普通に)カイ様と話が出来るようにしたい、んです。(現在その準備中)
クロードが生きていた。でも、片腕しか動かなくて、その片腕は責任を取って奪われたものだと。私のせいだ、と思ったのも束の間。ロインが最後に言った一言で全てが覆る。
「………彼は、生きてる、よね?」
気づくと立ち上がってロインの前まで進んでいた。そして夜だと言うことも忘れて、声を出してしまう。
「殺してないよね…?彼は、…クロードはまだ生きてるよね?!、お願い、そう言って!!!じゃないと私は貴方のこと…!!」
彼の胸元を握りしめながら叫んだ後、ハッとした。私は今、何を言おうとしたんだ。「貴方を殺してやる」とでも、言おうとしたのか。私の表情を見ようとしない彼に、もしかしたらと、思ってしまう。その現実を受け止めれる程、彼の存在は私に取って軽いものではなかったし、私は強くなかった。
私はその場に崩れ落ちるように倒れた。彼の横顔が、そしてこちらを振り向き微笑む表情が一瞬目の前に映る。なんでこんな時に思い出してしまうのだろう。その幻影を目に映らないよう、私は手で顔を覆った。
先程の問いに胸奥が思わずビクつく。まさか聞かれているとは思ってなかったからだ。気まずげに、見つめてくるクレアから視線を逸らし、焚火の揺らぐ炎に焦点を変える。そのまま黙ってしまい、暫くはそうしていたが、ロインは吹っ切った様に小さく笑うと手元の掛布を広げてクレアの体を包むように覆った。
「それじゃあまだ寒いだろ。それとさ、やっぱこれは先に言っておかなくちゃなんねぇから、黙って聞いてくれるかな。」
立ち上がって一歩彼女から離れると、真剣な面持ちでロインは深く頭を下げた。
「悪かった。俺は…正直、許して貰えるとは思ってないし、許して欲しいとも言えない。けど、謝罪はさせてくれ。」
そう一言ずつ噛み締めるようにゆっくりと、言い終えてからロインは頭を上げた。少しだけ切なげに彼の瞳が揺れ、寂しげな笑顔がロインからクレアに向けられる。
そして、ロインは事の顛末を静かに語りだした。
【一か月ほど前。街で兄貴を見かけて声をかけた。話に夢中になっていたら仇のアイツが現れた。俺は奴に斬り掛かったがガキ扱いするみたいにあしらわれて余計に腹が立った。
兄貴の体張った仲裁が入らなかったら、俺は本当にアイツを殺してたかもしれないんだ。】
そこまで言うと、ロインは手で顔を覆い、大きく息を吐いた。やっぱり今の状態じゃクレアの顔をまともに見れない。それに彼女に謝らなければならない最大の罪悪はこの後だ。
もう一度、意を決するとロインは再び語りだした。
奴が片手で俺に対抗してたのは、奴の利腕の神経が切られているからで。奴の犯した戦争犯罪は既にそれで贖われていると。不覚にも兄貴が言ったんだ。
でもさ。納得行かねぇんだよ。俺は。だって、親父は死んじまってるし。どうしてもそれで責任が“終わり”だなんて、俺は納得できない。だから。
「無抵抗で刺される痛みをテメェも味わってみろよ。」って、俺がアイツの腹を刺した──
「…ごめん。本当にごめん。」
平謝りに謝るしかない。何つっても俺があいつを“刺した”って事実は変わらないのだから。
__________
【 】内はダイジェスト書きしてます。字数オーバーしまくりなので、全文はログで見て下さい。
外は思ったより冷え込んでいた。昨日よりも随分と寒さが増している気がする。焚き火に当たれば平気かと思っていた自分の甘さに反省する。炎の灯りを頼りに足を進めると、彼が近くで腰掛けていた。彼の背中しか見えていないため、彼が今どんな表情をしているのかは分からない。ただ、心なしか悲しそうな印象を覚える。確かに、昼間のあの場で言ってくれても良かったのに、何故か頑なに話そうとしない様子に見えた。そして今呼び出されているのも、人のいない夜の時間だ。何か特別な理由があることには間違い無いのだろう。
彼に近づくと、ふと彼の独り言が聞こえた。
「…何を許してもらえないの?」
音量を小さめにしながら、彼に声をかけた。そして彼の隣に座って、焚き火に手の平を当てた。
そして彼を柔らかい表情で見つめた。
「ごめんね、…寒いところ、待たせてしまって」
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
______________________
前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
クレア様到着まで話をズルズル引っ張って済みません。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらない…んですよね。だって「後悔はしてない」とはいうものの、悪いのはどう見てもロインの方なので。
「…ねぇロイン。さっきの王女様の話、なんだけど…キゾン国の護衛官を傷つけたって…。貴方、私の知らないところで、何をしたの?」
怪訝そうな表情で彼を見つめた。彼とずっと行動を共にしていたわけではない。私は私の、彼には彼の担当があったから、それぞれがそれぞれの役割を全うする日々が続いていた。しかし夜には落ち合うことができたし、1日のうちに数回は顔を合わせることはあったから、決して彼と仲が悪いわけではないと私は思っている。しかし今、彼は私に隠し事をしていたのだと知った。すでにその事実だけでも寂しいと思っているのに。
私から視線を晒そうとしている彼の両肩を掴んでこちらを見させてる。その瞳でしっかりと彼の彷徨く目を捉えた。
「…どんな事でも怒らないし、ちゃんと最後まで聞くから。…教えて?」
私は何も知らない、何も知らないから、この時、そう言えたんだ。
-----------------
すみません、、一旦こちらだけお願いします_| ̄|○
リドーはそんなクレアを静かに見つめ、アルバレスは驚きに目を見張った。もっともアルバレスの場合は、王女殿下に物怖じせずに話すその器量に、であったが。
そんなそれぞれの思惑に、元の穏やかな笑みを湛えて王女は区切りの言葉を発した。
「では、改めて代表者のみでの話し合いを致しましょうか。」
手打ち一つ、こうして改めて後日に正式な内容を詰める会合が設けられる事となった。
今日の話し合いが解散となり、王女がアルバレスと兄リドーを引き連れ、街へ戻っていく。その馬車を見送っていると、エールボルドの村長が顔を真っ赤にしてロインに近づいてきた。
「お…お前はっ!!アレを人間に使ったのかっ?!」
「えーと。アレって?」
はぐらかすようにロインは返す。
「バッカもんっ!! イチコロに決まっておるわ!!」
「やだなぁ、親っさんってば。どのみち俺の腕は保証済みでしょ。」
あはははは、と笑って誤魔化す。そうした所で村長の怒りが収まらないのはロイン自身、よく身に染みていた。
「魔獣相手の技を人間に使うヤツがあるかーっ!!!!」
拳を振り上げ激昂する村長を周囲が宥めている間に、ロインはクレアの手を引いてさっさと小屋で待つ皆の所へと戻っていく。空笑いしながらロインはクレアを気遣うようにチラリと見る。このまま彼女が何も訊ねて来なかったら、あの一件は黙って伏せておこう。
クレアがクロードの事に、気づいてないのにわざわざ蒸し返すのは、やりたくないなとロインは思っていた。いずれは謝らなければならないが、今がそのタイミング…とはロインには思えなかった。ほんの少し、胸の中の棘がチクチクと心を刺す。
それでも。知りたくない事を敢えて教える必要はない。ロインの脳裏を親父の最期の姿が掠めていき、密かに強く唇を噛んだ。
______________________
フェルマー家の親父さまの所はさしずめ、ロイン曰く「あんな最期を聞いてなきゃ、こんなに憎まずに済んだのに」です。
“イチコロ”はアヨルでも知ってますので、問われれば説明可能です。
静まり返った状況に、私は再度、今度は王女様に向けて口を開いた。
「この子が…ロインが、護衛の方にご迷惑をかけてしまったんですね。…本当にすみません。それを不問にしていただいたことも、…ありがとうございました。…で、今あなた方がこうして村へ来て、お話させて頂いているのは、もっと別の趣旨のはずです。…どうか、その一件については後でちゃんとお話し聞きますので、今は懐に収めて頂きたい。…ロインもだよ。」
まるで喧嘩の仲介者のごとく、ロインにも声を掛けた。
「穀物の売買についてですが、ロインの言ったとおり、土地が浸水してしまったので今すぐは厳しい状況です。王女様のおっしゃる通り、耕作再開に向けてお力添えいただけるのであれば…売買について前向きに検討させてください。…ただ、そのお力添えの一つとして、…彼のお兄様の解放をお願いします。ご覧の通り、ここにいる村人たちは、まだ大人が必要な子供たちばかりです。…一人でも多く彼らを支えられる人がいて欲しい。…人手不足はお互い様です。解放されたからって、貴方達との縁を切るわけではありません。お兄様はこの村の人間として、貴方はキゾン国の王女として、新しい形で関係を築いていけばいい。…戦争が終わったから、できることじゃないですか。」
あの頃の私たちはできなかった。それでもあの人は、私を縛り付けることなく、故郷に返してくれた。クロードが私にしてくれたことが、ふと脳裏に浮かんでいた。
「そうね。その件については謝罪します。耕作可能になるまで此方も助力は惜しみません。全力で対処しましょう。」
真摯に王女は謝罪し答えた。具体的に詰めていくのはこれからになるが。続く話し合いに周囲は固唾を飲む。
「それは有り難い。じゃあ、ついでじゃないですがリドー兄貴も返してください。」
早く復興させたいんでしょ? と話を振る。
「そうしたいのは山々だけれど。何処かの誰かさんがうちの護衛官を再起不能にしてくれたおかげで、こちらも人手が足りないのよ。」
有能なお兄さんをまだ返す訳にはいかないわ、と王女は笑った。
「やだなぁ。“再起不能”て言う程、アレはダメージは残らないですよ? どなたかの人使いが荒いから、仮病でも使ってるんじゃないですか?」
「あらあら。怒りに任せて刺した人が何を仰るんでしょう。」
「ぶっ殺すつもりなら、とっくにアイツはあの世に行ってますよ? 数日麻痺する程度の傷で何を大げさに言ってるんでしょうかね。」
「まあ、仮死状態を麻痺状態だなんて、どういう判断能力をしてらっしゃるのかしら。」
会話の内容を知っているのは、王女とフェルマー兄弟だけである。護衛官のアルバレスですら、『療養の為に暫くキゾン王国に戻る』という事だけしか聞かされていない。エールボルドの村長は『まさか…』という疑いの目でロインを見やり、クレアに至っては何の事だか全く見当が付かない筈だ。
「不問にしたのはあくまでも、本人たっての希望だからで。貴方が牢屋にぶち込まれなかったのは周りの人間の尽力だという事に気づいてらっしゃらないのしら。」
それでもまだ言うつもり?と釘を刺すように、上から目線で王女はロインを見下した。この件に関しては、少なからずの不満が王女にも有るわけで。言い返せないロインを気持ち良さげに見下し煽る。
「それを申すなら、俺達家族に対しての賠償を改めて彼に請求しますが。」
爆発しそうなロインに対し、冷静に、リドーは王女に進言した。その言葉に王女も少しやり過ぎたと反省の色を顔に浮かべる。
危ない綱を勝手に拾ってきた私が悪かった。
彼らの間に割って入れるほどの自信がなく、少し俯いたまま反省していた時、目の前から視線を感じる。顔を少し上げるとロインの兄がこちらを見ている。何か、私のことを見物するように。疑問に思っていると彼の方から視線を外したため、私も元の通り目を伏せた。
それでも彼らの話し合いは徐々に火力を上げていく。私は彼らの言動を注意深く監視するようにしていた。大方、彼らが話し合いたい内容は理解した。それから逸脱するような方向へ話が展開されるようなら止めないとだし、暴力が発生しそうなときは怪我をして求める義務があると思ったからだ。
______________________________
彼女なりに静観していました
この後の”例の件”について、よろしくお願いいたします
リドー兄貴に視線を送れば、向こうも気付いてアヨルに村の皆と共に待っているよう説得をしていた
こうして一先ず、一行はエールボルド村長宅へと向かう事となったのだった
村長宅に到着すると、村長は呆気に取られた顔をしていた。事前連絡も何も関係なく、突然押し寄せて来られたのだから当然かもしれない。しかも相手は一国の王女だ
「円座の方が忌憚なく話せるでしょう?」
上下の関係は無しに、対等に会話をしたい、ということらしい。周囲を無視し、場の中程に王女は着いた。それを見てロインは王女の真向かいに座る。そんな遣り合う気満々の二人に深く溜息をつき、村長は二人の間に陣取った
王女から時計回りに、市街地から馬で追い駆けてきたアルバレス、クレア、ロイン、エールボルドの村長、そしてクレアの真向かいにリドーが腰掛ける。これでぐるりと円座に並んだ形だが
「早速ですが。村に来た本当の理由は何です?」
互いの紹介もすっ飛ばし、いきなりロインは王女に噛み付いた
「貴様!!その態度は不敬であるぞ!!」
そのあまりの態度にアルバレスは身を乗り出し諫めようとしたが。王女の手によって制される
「被害状況と復興の進捗をこの目で確認する為ですわ。」
そう答える王女だが、ロインは建前と判断していた。高々その為だけに足を運ぶような輩ではあるまい。笑顔は崩さぬものの、手を組んで肘をついて長丁場に備えて相手に視線を送る。そして、にこやかに言葉を返した
「御冗談を。俺らの村を乗っ取ってか、丸め込んで、未来永劫穀物を搾取するつもりでしょうに。」
「まあ随分な物言いね。いいでしょう。その通りだわ。貴方達とは良好な関係でキゾン国へ穀物を卸して貰いたいの。」
それ相応の取引をして頂けるかしら。とロインの言葉を流し、同じく笑顔で手を組み問う。こちらの足元は見せないし相手の足元も見ないつもりである。商売としては、買う側は少しでも安く、売る側は少しでも高く、お互い良い条件を取ろうとするもの。だが目指すのは、あくまでWin-Winの対等な取引だ
場の空気は完全に、王女とロインの二人だけのものになっていた
その時、王女様からもお誘いを受ける。思わずぎょっとしてしまった。この空気の中に私を入れようとしているのか。この様子なら2人で話したいのではないか、私なんて部外者なんじゃないか、と思ったが、チラッとロインを見る。少し不服そうに見えるが、それは王女様が私に手を差し伸べ、こちらへキゾン側へ寄らせようとしているのが見えたからかもしれない。
「…………是非、よろしければ」
私は彼女の手は取らず、苦笑いを浮かべてそう答えた。そしてそのままロインの隣へ歩み寄る。
「お連れしましょう、」
そうロインに声をかけて先に歩み始めた。例え想い人がいようと私はベレアン側だ。それを示すような行動であった。
心配するな、といつもの笑顔でクレアを宥める。そしてロインは自ら前に出た。
王女はそっと優しくクレアの肩に手を添えて、労うように優しく微笑む。そして彼女もクレアより前に出て、ロインと向き合った。
「そんな大仰な立場では無くってよ。私は一介の外交官でしかありませんもの。」
そう言い、華麗に御辞儀をした。
「貴方が、この村の代表なのですね。御会い出来て光栄です。」
そこまでは穏やかな笑顔で王女は挨拶をしていた。だが次には鋭い眼光で真っ直ぐにロインを射抜き、力強く声を発した。
「私はキゾン王国第一王女、ルアチャンナ・デ=キゾンと申しますの。貴殿とは一度ゆっくり話をしたいと思っていましたわ。ロイン=フェルマー殿?」
ロインも負けじと笑顔で王女を睨み付け、明るく大声で言い放つ。
「そうですか。それでしたら、エールボルド村の村長宅で今から如何ですか?」
「ええ、是非!そうして頂けると有難いですわね。」
「俺も、名高いキゾン王国の王女様にお会い出来るだけでなく、直々に御指名頂けるとは光栄です!」
「まあ!!本当に口がお上手ですね!!」
「いえいえ!!貴女の足元には及びませんよ!!」
うふふ、あはは、と二人とも笑っている。豪快な笑顔で、互いに火花を散らしていた。
「そうね。折角だからクレアさんも御一緒にいかが?」
アドバンテージを取る様に、王女はクレアに手を差し伸べた。
______________________
興奮…に関してはロインも押し留められなかったかも(汗)
そして、ロインvs王女会談へのお誘いです。多分、クロード関連のお話も出てきます。
「ロイン…!」
警戒するような厳しい視線を王女に向けている。私は王女様の前に立ち、守るようにしながらロインを制そうとした。
「落ち着いてロイン…!私が連れてきたの、…何も言わずにごめんなさい。市街地で会って、…村の様子を見たいからって…。彼女は…」
彼女のことを紹介しようとして言葉を引き戻す。彼に「キゾン国の王女様だ」と伝えて、カイの時のようにならないか不安になったからだ。気が立っている状態で何を起こすか分からない。彼女もロインも傷つけたくない、…ロインを守りたい。
不安げな様子で口をパクパクさせながら、それでも言葉を出せずにいた。
______________________
ロインがまた嫌な気持ちにならないように、興奮しないように言葉を選ぼうとしていますが、
ちょっと怯えています、ご認識を(..)
必死でアヨルはリドーに問い質した。同時に村の人々もリドーの存在に気付き始める。元は時期村長候補として、ロインの手助けも有りながら父親の右腕として働いていたのだ。注目を浴びる状況に困惑しながら、リドーはアヨルを宥める。
騒ぎが大きくなりかけたその時、皆の背後から響くような大声が聞こえた。
「俺はこの村の代表でロイン=フェルマーと言います。女王陛下におかれましてはどのような御了見で此方まで足を運ばれたのか、お聞かせ願いたい。」
声を張っていたのは、ロインだった。そして視線も一斉に彼へと動く。
仕事の片づけと午後の段取りを終え、昼食に戻ってきてみればこの騒ぎである。遠目でも見慣れぬ相手が来ている事はすぐにわかったし、アヨルの様子でリドーが戻ってきた事も把握した。
だが、実質リドー兄貴の帰還がメインで、此処に訪れた訳ではなさそうなのはすぐに感じ取れた。恐らく様相の異なるあの女の指図だろう。
そうロインは認識すると、その一人だけ明らかに違う、身分の高そうな女性─王女に厳しい視線を送った。
-------------------
ロインの位置からまだクレア様は見えてない、というか気づいてません。
&まさか相手がキゾン王国の王女だとは知らぬ状態。
きっと隣国フーゴン国の女性元首だと思っている…感じです。
私の言葉を聞き、彼女と少しずつ会話を始める村民達。王女も言葉を選びながら彼らと言葉を交わし始めた。その様子を私は固唾を飲んで見守るしかなかった。
一方で、ロインとアヨルの姿が見当たらなかった。朝出かける時には居たし、声もかけてきたはずだ。彼らが居ないことに不安が募っていたその時、「おにいちゃん!」と叫ぶ女の子の声が聞こえた。その声の主がアヨルであることがすぐにわかった。王女様から離れるわけにはいかなかったため、辺りを見回した。すると馬車の奥の方から泣き声が聞こえ、王女様から離れない程度に馬車の後ろを覗き込む。そこには泣きつくアヨルと王女様の側近にいらした男性が立っていた。
相手はキゾン国の人間だ、すぐに離さないとと思ったが、彼女の泣き声があまりにも縋るような声にピタッと身体が止まった。なんだか、このままで居させてあげた方がいいような気がして。ただ困惑な表情は隠しきれなかった。
-------------------
あまり動かない方が良さそうかと思い…
ロイン様の合流お待ちしております
「街の再建が一段落着いたら、友人のみのささやかな慰労パーティーを行おうと思っているの。是非クレアさんも行らしてね。」
さらりとそんな話を矢継ぎ早に行う他愛のない会話に混ぜてくる。はっきりとした彼女の受け答えのないまま会話を続け、淡々と馬車は道を進んだ。
馬車は暫く荒れ地の道を走り、そしてクレアの案内でアイレット村に到着する。
王女は馬車を降りると真っ先に、洪水の爪痕が未だ残る大地を前にして跪き、黙祷を捧げた。
一方で、クレアの話で経緯は手に取るように理解できた。王女は人当たりの良い笑顔を向けた。頭の中の算段等はおくびにも出さず、今はまだしっかりクレアを懐柔し、ゆくゆくはクロードの伴侶として二人仲良くキゾン王国に忠誠を誓ってもらおう。
そんなことを考えながら、そっと王女はほくそ笑んだ。
最後に、辿り着いた仮設住宅の周辺に居る人々に、王女は目を向けた。
確かに、クレアの言う通り一見して青年、壮年層の姿はない。城なら現役を既に退いている年配の者や、子供達の中でも年長とされている世代の子らが中心となって動いている状態だ。きっと大人は兵役で取られ未だ戻ってきてはいないのだろう。それを考えれば少し胸が痛む。
憂える王女の表情と村人に信頼されているとわかるクレアの姿に、そっとリドーは身を引くようにして彼女等から離れ、馬車の影へ下がった。先にロインに今日ここへ来ることを伝えられれば良かったのだが、呼び出された内容は馬車が走り出すまで知らなかった。今はまだ皆に合流できない手前、姿を見られない方が良い。そうロインとも話した事柄だ。
目深に帽子を被り、俯き加減で様子を窺う。リドー自身も村の様子は気になっていた。何よりアヨルが心配だった。とはいえ、それもロインから様子は聞いている。
だが。
馬車が到着したのを、アヨルは洗濯場から戻る途中で見た。よく見れば何故かそこにクレアの姿がある。けれどよくよく見るアヨルの瞳には、誰よりも胸を打つ姿が映っていた。
洗濯籠を放り出し、全速力でアヨルは馬車の方へ駆けて行く。そして。
「お兄ちゃんっ!!!」
それからしばらくして「ここです」と声を上げる。馬車を停止させ、アイレット村の様子を見せた。…まるで、そこに本当に集落があったのかの疑ってしまう光景が広がっている。復興が進んでいるとはいえ、未だ地面とほぼ同等の位置に屋根が落ちているし、地面はぬかるんだままだ。数えられる程度の建物が何とか支柱を保って建っているが、これが元通りになるのにどれほどの時間と労力が必要になるのだろうか。
私はここに住んでいた住人の年齢や生活様式、戦争があったときに行動していたことなど、自分の知って見てきた範囲の話を全部伝えた。彼らの助けになるはずだと信じて。
一通り伝え終わった彼女の表情を見て、次に行こうと伝えた。今度はここに住んでいた人たちが暮らしている仮設住宅に案内したかったからだ。こんな光景をずっと眺めて観察しているよりも、実際にここへ戻ろうと奮闘する住人たちと接してもらう方が価値があるだろうと思って。
再び馬車に乗り30分した頃、私たちの住む仮設住宅へ到着する。彼らは自分たちの手を止めて顔を上げた。皆何事だと不安な表情を見せるが、私が先に降りると少しホッとしたように驚いた。
「こちらが先ほど案内したアイレット村と…その近隣の住人たちが暮らしている場所になります。住人の多くは…まだまだ大人の力が必要な若い子たちばかりなんです。」
とても朗らかに、そして、その笑顔は少女のように輝いた。
「嬉しいわ。折角だから、両方行かせて貰いましょう。」
言うが早いか、王女はそのままクレアの手を引いて待機している馬車へと向かった。既にリドーは馬車で待機しており、御者の隣に腰かけている。護衛官アルバレスはまだ戻って来てはいなかった。
「では、参りましょうか。」
さっさと自分で馬車の扉を開けると、周囲の様子など気にも留めず、(建前では)クレアに乗るよう勧めた。半ば強引に押し込むようにして、自身も向かいに腰掛ける。
そうして馬車は一路アイレット村へと出発した。
昼食用の炊き出しが着々と仕上がってくる。と同時に匂いにつられて、作業を手伝っていた子供達が次々と共同小屋へ戻ってきた。
「みんなーっ、ちゃんと手を洗うんだよーっ!!」
「はーい!!」
元気のいい返事は返ってくるものの、腹ペコ怪物の子供達は目を離すとすぐに、汚れた手のままで摘み食いを試みるもんだから、アヨルは少しも気が抜けない。料理は女性の先輩方に任せて、逃げ回る子達を一人ずつ捕まえてはちゃんと手を洗わせる。こういう集団生活では、病気が広がっていくのが一番怖いのだと、口酸っぱく兄貴に言われていた。
汲み上げた井戸水を使って何とか全員手を洗わせ終えると、先に子供達に昼食を配り、その足で年配の方々の分を世話係の人に渡しに行く。そしてついでに出てくる汚れ物を回収し、洗濯場へ持っていった。
「ふぅ…。」
洗い桶の水に浸すと、腰を伸ばしにアヨルは立ち上がる。自分が一番ぐるぐる走り回っているんじゃないかという気持ちになるが、こうして息を吐いた途端襲ってくる虚脱感が、どうしようもなくアヨルを不安にさせた。
みんな、頑張ってる。私も頑張らないと。
「………。」
無理はするな、と兄貴は言うけど。誰だって無理はしてる。兄貴だってそうだ。
でも、いつまで続くんだろ。…こんな生活。
どれだけ考えないようにしても、言い様のない不安はどんどん心に積もっていく。
気づけば一人、アヨルは泣いてた。
__
王女は完全にクレア様を「逃すまじ」モードに入ってます。友情親交から(クロードとの)サプライズ再会目論む女性ですから。やっぱり話はロインからで。
「わ、私は…っ」
名乗ってもいいのだろうか。私の名前を聞いて、キゾン国から逃げ出した捕虜だと、…キゾン国の一騎士団長に罪を与えた人間だとバレてしまわないか。私は、あの後クロードがどうなったか知らない。カイさんから生きていることは教えてもらったが、戦後の彼の行方など知らない。生きているのか、亡くなってしまったのかさえも。
クロードが私を助け、逃亡に加担した話が彼女にも伝わっているのか、伝わっているのであればどこまでの詳細が伝わっているのか、分からない。ただ、私はこの状況から逃れられないとも悟った。
「……私は、クレア・ロバーツと申します。」
恐る恐る名前を口にした。怖くて彼女の表情も見れない。ただ、まだ聞こえてこない彼女の声にすかさず言葉を続ける。
「あ、貴方のおっしゃった通り、アイレット村から来ました。…村自体は損壊が多く、今は別の場所に仮設テントを建て暮らしています。…どちらの場所も案内できますが、いかがでしょうか。」
__________________________
成り行きでいきましょう〇
クレアもその方が彼女らしく動けるかと思いますし、
クロード様の認知も、必ずしも前にお伝えした方法で認知しないとなんて思っていないので!
(むしろ王女様から教えてもらうとか、そう言うのもありかもしれないなとも思いました)
なので、一旦気にせずキャラたちにお願いしちゃいましょう
「貴女はとっても優しいのね。」
心配いらないわ、とウィンクをする。わかっているから、と笑顔をクレアに向けて親しげに彼女の手を取る。
「良かったら、名前を聞かせて貰えないかしら。これも女神様のお導きね。それに、もし貴女がアイレット村から来たのなら、この後私を案内して下さらない?」
王女は軽く握手を交わし、これから向かう所であった事をクレアに告げた。柔らかい微笑みの中にも、何処か有無を言わせぬ力強さがある。しっかりとクレアの眼差しを捉えた上で、王女は何の迷いもなく自己紹介を始めた。
「改めて、私から名乗らせて貰うわね。私は、ルアチャンナ・デ=キゾン。キゾン王国第一王女で外務大臣を務めているの。貴女は?」
---------
大変遅くなりました(陳謝) 一旦成り行き任せでさせてもらえると有難いかな、と思ってます。
実質、クレア様がクロードを見かけるまでの間は、現状況から考えても暫く時間がかかるだろうし、どのみちまだ復興…生活再建にドタバタしてる時なので。
ルアハ王女は多分この状況を楽しみます(裏ボス的に)。フェルマー兄弟はクレア様、クロード、二人の状況を分かっているので一番力になるし、最も立ち回ってくれる存在だと想定してます。
とはいえど。クレア様の動き次第で彼らがどう出るか。まだ未知数ですので、私もあまり想像できないんです。素直に動いてくれそうなのって、リドー兄貴だけだから。
「ロイン?……あっ…」
彼と目がバチっと合ってしまい、すぐにロインでないことを理解する。そもそも名前を名乗っていたじゃないか。服もこの国の軍服ではない。とんだ大きな間違えをしてしまって、恥ずかしくなった。
「…す、すみません。…知り合いに、声が似てて…。彼もフェルマーさん、だったから…。」
そう言うともう一度女性の方を見つめる。
「私も大丈夫です。お怪我がなくて、よかったです。…先程の護衛の方は、どうか許してあげてください。…私が貴女に覆い被さる寸前、彼も貴女を助けようと手を伸ばしていた姿、見えたので…。」
それだけ言い残すと、立ち上がり「それでは失礼します」とその場を去ろうとしていた。
落ち着いた様子で返事をする。体を起こし、彼女は今しがた立っていた場所を見返した。他の住人か遠巻きにしてくれていたおかげで、他の者への被害は無かったらしい。
「ルアハ様っ!!」
血相を変えていたのは、ほんの僅かに王女から離れていたアルバレスである。本来護るべきだった彼にとっては重大な失態に他ならなかった。
「申し訳ございません!! どのような処罰もお受けします!!」
「そうね。他にも危険な半壊の建物はまだまだ存在するから、早急に解体するように各所へ伝えて頂戴。」
「ハッ!!」
それこそ泣きそうな声で返事を返す彼は、すぐさま軍部の者達の元へ駆けていった。その背を軽く見送って彼女はクレアに振り向いて声をかけた。
「改めて、礼を言うわ。それに、貴女も大丈夫かしら? 怪我はしていない?」
丁度その時、二人に近づいてくる人物がいた。そのまま彼は王女に敬礼をし、その場で名乗りをあげる。
「リドー=フェルマー。只今参上致しました。」
彼の容姿は何処となくアヨルに似ていて、その声音はロインによく似ていた。
---------
ひとまずこちらだけ。まだ今の段階ではきっと、王女はクレア様をただの被災者の一人としか見てないと思われますので、「ロインと繋がってるよー」アピールをばして頂けると助かります。
クロードはもうちょっと後での合流になるんじゃないかと。(ベハレスコ農村部視察後、戻ってからで考えてます。)
念の為に持ってきていた古紙にメモを残し、帰路に立とうとした。
その時、後ろから何か嫌な気配を感じた。
直感に等しい感覚に、反射的に後ろを振り向くとゆっくりと崩れ始めている家屋があった。
その近くには人がいるのが見えて、すぐに声を上げる。
「……………危ない!!」
声を上げた瞬間、木の折れる音とともに支柱の役割をになっていた太い丸木が人目掛けて倒れた。間一髪、私はその近くにいた人の背中を押して、丸木の下敷きから逃した。一緒に地面に倒れ込む。その後、屋根や瓦礫がくずれるおとがきこえたが、やがてピタリと止まった後、顔を上げて瓦礫の様子を見た。崩れ去り、家屋の形を失っていた。
もう大丈夫だと判断し、一緒に地面に倒れんだ人に声をかけた。
「突然すみません!…あ、あの、お怪我は……」
声をかけた人を見て言葉を止める。私が瓦礫から庇っていたのは、先程の綺麗な洋装の女性だった。近くの付き人の方も焦った様子で彼女の安否を確認していた。
--------------------------
遅くなってすみません!そして一旦こちらだけ……
加えてですが、無理矢理王女様と接触させていただきました(p_-)
アルバレス様も近くにいたものの、丸木が落ちてきたのはほぼ王女様目掛けてだったことと、
アルバレス様が庇う前にクレアが動いてしまっていたということにしてもらえればと…
ほんと、強引にすみません!
この先ダリル様とかも登場させたく思ってます。
王女様にはクレアの存在を把握してもらえれば、
再開する時やプロポーズしていただくときなどに役立つかなと思ったので、
初手で接触させていただきました。
王女様がクレアのことを知っている知らないはお任せしますし、
この行動を王女様がどう受け取ってクレアにどう声をかけるかもお任せします。
号令と共に一斉に軍服を着た者達が、中心の彼女に向けて敬礼をする。彼女も手を挙げ、彼らを労う様に振舞った。今日配分する荷物の積み下ろしがあらかた終わった所で、一部の兵士は集まってきていた住民達への配給の対応に当たっている。この後第二陣、第三陣と荷物が運ばれてくる予定だった。
「引き続き、怪我の無いよう瓦礫の撤去に当たって下さい。以上。」
彼女の言葉に皆が一喜する。浮足立つのを抑えるように、強い声で言葉を閉めた。王女は皆が持ち場に戻るのを確認しながら、自身も次の視察地へ赴く準備に取り掛かる。
「リドーは何処にいるのかしら。」
傍で控えている護衛官アルバレスに、彼の所在を尋ねる。まだ、そこにクロードの姿は無かった。クロードと共に王女を護るアルバレスは畏まって答えた。
「もうすぐこちらに到着します。」
今日は漸くベハレスコの農村部、穀倉地帯へ行く事が出来るのだ。目的はエールボルド村での村長と直接の会談、及び3村の被害状況と現状の確認である。それと、キゾン王国の代表としての洪水の一件で謝罪もあった。
案内役に同地区出身のリドー・フェルマーを据えて、これから向かう予定である。
_
クレア様には、王女一行を避けて物資の調達に専念して頂いてもいいですし。敢えて接触でも(笑)
瓦礫撤去の手伝いしながら、同じ作業に当たっているであろうダリル様など引っ張り出して、暫く街に留まってもらってもいいですし。(…一応本日中にクロードもベハレスコ入りする予定)
それまでの詳しいクロードの経緯は、相談板での参照をお願いします。
号令と共に一斉に軍服を着た者達が、中心の彼女に向けて敬礼をする。彼女も手を挙げ、彼らを労う様に振舞った。今日配分する荷物の積み下ろしがあらかた終わった所で、一部の兵士は集まってきていた住民達への配給の対応に当たっている。この後第二陣、第三陣と荷物が運ばれてくる予定だった。
「引き続き、怪我の無いよう瓦礫の撤去に当たって下さい。以上。」
彼女の言葉に皆が一喜する。浮足立つのを抑えるように、強い声で言葉を閉めた。王女は皆が持ち場に戻るのを確認しながら、自身も次の視察地へ赴く準備に取り掛かる。
「リドーは何処にいるのかしら。」
傍で控えている護衛官アルバレスに、彼の所在を尋ねる。まだ、そこにクロードの姿は無かった。クロードと共に王女を護るアルバレスは畏まって答えた。
「もうすぐこちらに到着します。」
今日は漸くベハレスコの農村部、穀倉地帯へ行く事が出来るのだ。目的はエールボルド村での村長と直接の会談、及び3村の被害状況と現状の確認である。それと、キゾン王国の代表としての洪水の一件で謝罪もあった。
案内役に同地区出身のリドー・フェルマーを据えて、これから向かう予定である。
_
クレア様には、王女一行を避けて物資の調達に専念して頂いてもいいですし。
瓦礫撤去の手伝いしながら、同じ作業に当たっているであろうダリル様など引っ張り出して、暫く街に留まってもらってもいいですし。(…一応本日中にクロードもベハレスコ入りする予定)
それまでの詳しいクロードの経緯は、相談板での参照をお願いします。
今となっては、あの言葉の意味が理解できた。私の正体を知っていながら、少しでも私の心の荷を下ろそうと言葉を選んで伝えてくれたのだろう。…本当、優しい人だった。
馬で進んでいるものの、瓦礫が多く整備されていた道もなくなっているため、馬を走らせることは難しかった。ゆっくり、それでも少しずつ市街地へと近づいていった。
市街地の中心部までやってきて、馬を近くに置いておいた。ここからは自分の足で場所を探そう。救援物資が届いている場所を特定しようと意気込んだが、それはすぐに見つかりそうだった。近くにいる人々がほとんど同じ場所を目指しているからだ。その流れに沿って歩みを進めると、大きな木箱や荷台が下ろされている場所を発見する。多くの人々がそこに群がっているのだ。私は群衆の中には行かず、遠くからそれを眺める。あまり目立ちたくもなくてフードを被りながらその様子を伺った。
知っている軍服の人達がたくさんいる。もう私の服は捨てられてしまったが、妙に親近感を抱いてしまった。中央には綺麗な服装の女性がいらっしゃる。何者なのかは分からなかった。
くっそ、やりやがったな。
それでも、少しばかり喜ばしい気持ちになったロインであった。
クレアが市街地に出ている間、ロインは仲間と共に村の復旧にあたっていた。まだ倒壊家屋の残骸が残っているものの、使える材木はあらかた運び出し終えて、今は土壌の水抜きに取り掛かっている。まだ、個々に生活を維持する状態に無い為、食事は村全員分の炊き出しで賄い、寝泊りは仮組した小屋を各戸別に使って貰っている状態だ。
「コラーっ、泥団子は上にある的に向けて投げろって言っただろっ!」
お互いに投げ合いしている子供らに向けて、明るい声で叱咤する。
水抜きしたい土地の周りに溝を掘り、掘った土は土地の上へと積み重ねる。水は低い方へと流れていくので、掘った溝へと溜まっていく。そうして水路を作り、土地に残る余分な水を排していくのだ。
最初の一か月は洪水のショックと、戦争が終わった事の安堵で気が抜けた者が多く、まともに生活の立て直しに掛かれるようになったのは、二か月目に入ってからだ。それぞれの役割にも漸く慣れていき、自衛団のメンバーも責任有る立場で動いている。目に見えて分かるほどではないが、着々と物事は進んでいた。
今の村での仕事の内訳はこうである。
まずは炊き出しを中心とする、生活係。洗濯場は共同使用にし、共有の小屋の清掃、弱者の世話、村人の健康管理など、割と幅広い分野を担ってもらっている。
その中でも、年少の子供達には動けない御老体方の見守りを、同時に御老体方にも幼子達の面倒を見てもらい、相互に役割を与えて張り合いがあるように心がけたりもしていた。
働ける者は、市街地に行って物資の調達をする係と、村で復旧に当たる係に分かれて作業をしていた。それなりに体力も危険も伴うので、見極めた上で物事に個人対応できる人選をしている。
アヨルは生活係に籍を置く形だが、各部署への情報伝達および調整に奔走してもらっている。そしてロインは村の代表として、各所への指示、観察、対外交渉、他…人手の足りていない所の助っ人など、平たく言えば『何でも屋』だった。
彼の頬に優しく両掌を当てて円を描くように挟む。柔らかい頬がムニムニと動いた。
そしてまだ開き切っていない瞳のまま微笑みかける。
「……まだ、眺めていたい?」
少しポカンとしている彼にクスリと笑うと「冗談。」と言って、手を離した。上半身を起こし、上へと手を上げ身体を伸ばした。そして自分が包まっていた毛布を彼に掛ける。
「…市街地、行ってくる。貴方はここで待ってて。…大丈夫、無理はしないよ。貴方にこれ以上、心配かけたくないしね。…また夜、ここで一緒に寝よ。」
そう言うと立ち上がって朝日を浴びに外に出た。
______________
復興進捗あると嬉しいです…!
お願いしてもよろしいでしょうか、、お手伝いはいくらでもします。
クレアの反応楽しんでもらえてよかったです笑
彼の頬に優しく両掌を当てて円を描くように挟む。柔らかい頬がムニムニと動いた。
そしてまだ開き切っていない瞳のまま微笑みかける。
「……まだ、眺めていたい?」
少しポカンとしている彼にクスリと笑うと「冗談。」と言って、手を離した。上半身を起こし、上へと手を上げ身体を伸ばした。そして自分が包まっていた毛布を彼に掛ける。
「…市街地、行ってくる。貴方はここで待ってて。…大丈夫、無理はしないよ。貴方にこれ以上、心配かけたくないしね。…また夜、ここで一緒に寝よ。」
そう言うと立ち上がって朝日を浴びに外に出た。
本当に、あんなことを言ってマジで「OK」されたらどうしようかと思ったぜ。
クレアがまだちゃんとまともな思考を持てる状態であることを確認出来て、ロインは一安心していた。疲労と絶望で頭が回らなくなったら、うやむやなまま流されてしまうか、自ら投げやりに首を縦に振ってしまいかねないので。
そうならないようにケアするのも自分の役目だと、ロインは考えていた。
そろそろ、アヨルの方もガス抜きしてやらないと、だよな。
最近は情緒不安定なのか、表情がいつも以上にころころ変わる。意外に繊細な神経の持ち主であることを兄はちゃんと理解しているのだ。まあ、本当は長兄が戻って来れれば、その分の負担は軽減するんだけどな。
長々と下らぬ事に頭を回しつつ、クレアの目が開く様をじっくりと堪能する。
「よぉ、おはよ。…可愛いんで、つい眺めてた。」
多分なんで見ているのか聞きたいだろうと思って、ロインは自ら白状した。
__
クロードとクレア様の再会作戦にあたり、この4か月間の復興進捗タイムラインがあれば良いな、と考えてます。まだまだ瓦礫に包まれているとはいえ、復興部隊が何もしてない筈は無いので。
相談板の方に上げられればと思ってます。(クレア様を挟まない、クロード側の現状の話とか)
& クレア様の可愛い反応!!ごちそうさまでした(笑)
「馬鹿!!最低!!変態!!ビッチ!!」
少し大きな声を出してしまったことにすぐに口を噤む。しかし赤くなった頬は火の灯りのせいで丸見えだった。からかわれているのがすぐに分かった。けれど、上手にあしらう言葉が見つからず、語彙力のない言葉で言い返すことしかできなかった。
すぐに彼から離れるために小屋の方へと向かった。しかし、ふと立ち止まって思い直すと、もう一度ロインのところまで戻ってくる。そして後ろから首後ろの襟を掴むと強引に引っ張るように連れていく。
「貴方も戻るのっ!」
そう言って小屋に入り、アヨルが寝ている傍へ彼を放り投げる。自分はアヨルとロインとは反対側の布団の上に寝転がり、彼の分の毛布を奪い、ミノムシになるかのように身体に巻き付けた。そして背を向けながら、
「貴方はそっち、…じゃ、お休みっ」
と言って、目を閉じた。
彼の言う通り疲れがたまっていたせいかすぐに寝入ってしまった。
翌朝、市街地に行くために起きようとしていた時間にも関わらず、背を向け遠ざけて寝ていたクレアの身体はロインのすぐ傍にあった。
____________
遠慮なく使わせてもらいました…!
この後少しずつクロード様とクレアが近くにいるように仕向けて行けたらと思います
「馬鹿!!最低!!変態!!ビッチ!!」
少し大きな声を出してしまったことにすぐに口を噤む。しかし赤くなった頬は火の灯りのせいで丸見えだった。からかわれているのがすぐに分かった。けれど、上手にあしらう言葉が見つからず、語彙力のない言葉で言い返すことしかできなかった。
すぐに彼から離れるために小屋の方へと向かった。しかし、ふと立ち止まって思い直すと、もう一度ロインのところまで戻ってくる。そして後ろから首後ろの襟を掴むと強引に引っ張るように連れていく。
「貴方も戻るのっ!」
そう言って小屋に入り、アヨルが寝ている傍へ彼を放り投げる。自分はアヨルとロインとは反対側の布団の上に寝転がり、彼の分の毛布を奪い、ミノムシになるかのように身体に巻き付けた。そして背を向けながら、
「貴方はそっち、…じゃ、お休みっ」
と言って、目を閉じた。
彼の言う通り疲れがたまっていたせいかすぐに寝入ってしまった。
__________________
翌朝、市街地に行くために起きようとしていた時間にも関わらず、背を向け遠ざけて寝ていたクレアの身体はロインのすぐ傍にあった。
そう言うと、クレアの両頬を包む様に両手で挟んで、ウニュと寄せる。自分の事を棚に上げて無理をし通すクレアに、軽いお仕置きを与えた。
「俺は昼間でもテキトーにサボってるから。休息は十分足りてんだよ。お前こそ、気ィ張り詰め過ぎだろーが。アヨルが言ってたぜ。『クレアが働き過ぎだ』って。」
有難い事ではあるが。こんな時だからこそ、程々に手を抜くってことをちゃんとして欲しいのだ。そうでないとクレア自身がぶっ倒れてしまう。
「疲れてんのはお互い様だろ?クレア。」
彼女の瞳を見つめたまま、ロインは笑って言った。こんな状況下にある気持ちが、どうにかしたいと突き動かすのは理解できる。けれど、だから余計に危険なのだとロインは感じていた。ロインは手を彼女の顎へ移動させると、軽く持ち上げ、耳元へ顔を寄せる。
「それとも、運動が足りてねぇんなら、よく眠れるように、俺がイカせてやろうか?」
勿論、冗談である。
___
二人きり、ですし。多少大きな声出しても誰も気づかんだろうし。…という状況。
デリカシー無しのロインの言う事ですので。引っ叩かれるのは承知の上なので、クレア様が怒って小屋に戻ってくれるのを狙っております。
「?!…ま、まだ起きてたの?」
もうてっきり寝ていると思っていた。こんな時間まで起きているのは、きっと何か作業をしていたのだろう。彼もまた村の復興のために朝から晩までよく働いていた。昨日も夜遅くまで市街地にいて、食料調達していた。今日も本当は市街地へ向かおうとしていたから、私が代わりに行ってくると声を上げた。彼にはゆっくり休んで欲しくて。
「…食料、小屋に置いておいた。多分、1週間は持つと思うよ。」
今日の成果を伝えると、更に落ち着いた少し暗めのトーンで言葉を続けた。
「今日、聞いたんだけどさ。明日以降、市街地に今まで以上の救援物資が届くんだって。…フーゴン国からの物らしいけど、裏ではキゾン国が支援してる…とかないとか。
詳しい場所まで皆んな分からなそうだったけど、明日行って、場所確認してこようと思う。」
市街地も安全な訳ではなかった。倒壊家屋が多く、いつ崩壊してもおかしくないような建物ばかり残っている。人々が暮らしてはいるが、私たちがここから市街地に向かうにはそんな建物が多く残る道を通らなければならなかった。
私は寝ぼけ半分、ロインの前髪に触れ、かき上げるかのように撫でた。ああ、こうしてみると本当、雰囲気はあの人に似てるんだよなぁ。本人には到底言えないけれど。
手を下ろすと軽く笑みを浮かべた。
「早く寝な?疲れてるでしょう…。私はここにいるから、…ゆっくりお布団入っておいで。」
今日の記録分を書き終えて、ロインは伸びをしながら窓の外を眺めた。遠くで焚火の火が揺らいでいるのが見える。そういやまだクレアが戻ってこないな、と思いながら空気を吸いに外へ出た。
「んー、ありゃぁ…」
揺らぐ光に人の影が見え隠れする。もしかしたら、とロインは速足で見えている焚火の方へ向かって行った。
「よお、お疲れさん。」
近づけば思った通り、クレアだった。ロインは彼女の隣に並んで腰を下ろす。ちょうど目の前の焚火も挨拶を返すように爆ぜた。
ベハレスコ領にあった3村の被害も各地と同様であり、家屋の倒壊が酷かった。引き起こされた洪水のせいで作物を育てていた土地も水に流されてしまっている。漸く水が引いてきたところだが、それでもぬかるんだ土壌では家屋の建て直しはまだ先になるだろう。
しかしこの侵攻に加担したフーゴン国からベハレスコ領の村々に救援物資が届くようになった。母国から供給されることなどなかったため受け取る他なく、それで何とか暮らしを保っていたのだった。
寝静まった夜。焚火を頼りに街から避難場所へと戻ってくる。私を匿ってくれたロイン達の村もまた、あの日避難してからそのままの場所で最低限の暮らしを守っていた。もう皆それぞれの小屋やテントの中で眠りについていた。私は荷物をいつもの貯蔵庫へ卸しに行く。日中、瓦礫の撤去をしながら掘り出せた衣類や食料、他国が実施している救援物資の調達を行いここに戻ってくる。そしてまた陽が昇れば瓦礫の撤去に向かう。そんな日々の繰り返しだった。
(あと一週間分は稼げたかな…。今日は、ちょっと頑張ったかも。)
焚火の前に腰を下ろす。今ロイン達のいる小屋に戻れば、彼らを起こしてしまうだろう。このままここで一休みしようと、膝を抱えながらぼんやりと火を眺めた。
ベハレスコ領にあった3村の被害も各地と同様であり、家屋の倒壊が酷かった。引き起こされた洪水のせいで作物を育てていた土地も水に流されてしまっている。漸く水が引いてきたところだが、それでもぬかるんだ土壌では家屋の建て直しはまだ先になるだろう。
しかしこの侵攻を進めたキゾン国からベハレスコ領の村々に救援物資が届くようになった。母国から供給されることなどなかったため、敵意はあるものの受け取る他なくそれで何とか暮らしを保っていたのだった。
寝静まった夜。焚火を頼りに街から避難場所へと戻ってくる。私を匿ってくれたロイン達の村もまた、あの日避難してからそのままの場所で最低限の暮らしを守っていた。もう皆それぞれの小屋やテントの中で眠りについていた。私は荷物をいつもの貯蔵庫へ卸しに行く。日中、瓦礫の撤去をしながら掘り出せた衣類や食料、他国が実施している救援物資の調達を行いここに戻ってくる。そしてまた陽が昇れば瓦礫の撤去に向かう。そんな日々の繰り返しだった。
(あと一週間分は稼げたかな…。今日は、ちょっと頑張ったかも。)
焚火の前に腰を下ろす。今ロイン達のいる小屋に戻れば、彼らを起こしてしまうだろう。このままここで一休みしようと、膝を抱えながらぼんやりと火を眺めた。
馬車の前後を護衛する役目を担う一人として、今は後方側について馬上より警護の目を光らせていた。操馬は片手で行っているが、慣れ親しんだ愛馬だからこそか、全く苦ではない。率先して馬の方がむしろクロードに合わせてくれている。
後発の復興部隊に先んじて、まずはフーゴン国の元首に会い、この一週間の助力への感謝の意と引き続きの協力要請、そして今後の対応についての話し合いを行うのが目的だ。そしてその後、フーゴン国で帝国ベレアンと終戦協定の締結を結ぶ。
出発までの時間は、クロードには取り分け忙しい一日であった。
施術後、目を覚ましてからゆっくりする間もなく異動への書類提出を迫られた。そしてすぐに身体の洗浄と健康診断がなされ、片手動作に慣れる間もなく、邸宅で一時の身支度を強要される。そのまま、拉致されるがごとくクロードは王女のボディカードに就かされた。あとは現在に至るまで見ての通り、フーゴン国への御供の真っ只中であった。
クロードの懐にはあの短刀が収められていた。その存在を感じながら、託してくれたカイの事を想う。クロードに憧れを抱き、陰日向共に信じて付いてきてくれた。特にクレアを逃してからは、彼には苦労ばかりを掛けてしまったと詫びる気持ちが深く胸に響いている。あの最後の泣き顔には、上司であった思いの労い等ではなく、掛け替えのない親友として、共に乗り越えた戦友として、彼の想いを分かち合いたい。
ちゃんと生きて欲しい─カイのその願いに、今度こそ前向きに応えたいと、クロードは強く望んだ。
サイルの事はカイに託し、クレアが望んだ様に、彼も新しい人生を歩んでくれることを願った。そして伝えられた彼女の”いつか必ず会いに行く”の言葉を、クロードも同様に胸に描いた。
___
また時系列前後しても良いので、復興活動等書いて頂ければ有難いです。
市街地は戦闘被害中心で、既にフーゴンから日用雑貨や食料などの支援物資が入ってきております。
一部フーゴン所属の再建活動隊なども、ベハレスコ入り。
ロイン達の集落(3村)は、洪水被害のダメージで壊滅に近い感じになるかと
思わぬ彼女の申し出に、ロインは目を丸くした。
「…マジ…かよ。本当に、此処にいるつもり…なのか?」
クレアにだって故郷はある。帰りたい筈だ。何より彼女の恩人を目の敵にする俺がいるってのに…
「まあ確かに、すぐにはどっかに離れてくって訳には行かないよな。」
旅の安全や生活の確保を考えれば、今暫くこの村に留まって様子を窺うのが賢明だ。国内情勢は何処に行っても乱れているだろうし、取り敢えず身の安全を確保できてる間に移動する為の蓄えを備えておくのが肝心になる。
少しだけ躊躇った手をクレアの頭に乗せて、そのまま軽く撫で回した。
「それじゃあ。宜しくな。、クレア。」
頭から離した手を、今度はクレアに向けて差し出す。戦争という大きな枷が一つ消えた、とはいえまだまだこれからが大変だ。きっと生活環境は大きく変わっていくだろう。支配する相手が変わるだけ、と言ってしまえばそれまでだが。
緩やかだが新しい時代へと風が動く予感がした。そうして未来が明るく照らしてくれる事を密かに願った。
------
すっかり遅れてしまって申し訳ございません。でも本当に助かりました。有難うございます。
(加筆+仕切り線入れの為、06/24分の再投稿をしております)
「…マジ…かよ。本当に、此処にいるつもり…なのか?」
クレアにだって故郷はある。帰りたい筈だ。何より彼女の恩人を目の敵にする俺がいるってのに…
「まあ確かに、すぐにはどっかに離れてくって訳には行かないよな。」
旅の安全や生活の確保を考えれば、今暫くこの村に留まって様子を窺うのが賢明だ。国内情勢は何処に行っても乱れているだろうし、取り敢えず身の安全を確保できてる間に移動する為の蓄えを備えておくのが肝心になる。
少しだけ躊躇った手をクレアの頭に乗せて、そのまま軽く撫で回した。
「それじゃあ。宜しくな。、クレア。」
頭から離した手を、今度はクレアに向けて差し出す。戦争という大きな枷が一つ消えた、とはいえまだまだこれからが大変だ。きっと生活環境は大きく変わっていくだろう。支配する相手が変わるだけ、と言ってしまえばそれまでだが。
------
すっかり遅れてしまって申し訳ございません。でも本当に助かりました。有難うございます。
ただ、気が付けば私の涙は止まっていて、冷たく悲しかった心が少しずつ温まっていくような心地がした。
”美人”という言葉に首を左右に軽く振る。それから一呼吸置き、涙で潤った瞳で少しだけ微笑む。
「…貴方と出会えてよかった。…ありがとう、ロイン。」
それから彼が私の頬から手を下ろした時、考えていたことを彼に伝えようと決心する。正直、彼が快く受け入れてくれるだろうかと不安でいっぱいだ。いや、迷惑だと振りほどかれてしまうかもしれない。けれど、私なりに助けてもらった恩を返したい。そしてここから、クロードともう一度会うために進んでいきたい。
「ねぇロイン、…私、ここに残りたいと思ってる。皆が住んでいた場所に戻れるように、…敗戦で不安定な生活を少しでも支えたい。私にできる限りのことは何でもするつもりだから、…どうか、私をここに置いてくれない、かな」
まあ、クレアって愛嬌あるし、美人だからな。いい様に囲うつもりで拾ってきて、マジになっちまったというヤツかもしれんし。
そう考えるとクレアが思う程、良い奴だと考える気にはなれなかった。
大きく息を吐いて、ロインは肩の力を抜き、そっとクレアの両頬に手を添えて微笑みける。
「ほら、もう泣くな。折角の美人が台無しだぜ?」
親指で両眼から零れ落ちる涙を拭う。綺麗なのは見た目だけじゃない。心もクレアは綺麗だ。子供の無垢な綺麗さより、痛みや辛さの先にある言い訳や妥協を受け止めてなお真っ直ぐに、素直で在る芯の強さみたいなものが輝いている。
あまりそういうのを言葉にするのは得意じゃない。が強いて言えば、真面目、ってやつかな。
本当に、こんな形で出会わなかったなら、もっとクレアとも親密になれたかもしれねぇんだよな…。
そう思うと、少し寂しい気がした。
「彼がいつも、傍に居てくれたから…かな。あの人、騎士団長だったから…そんな人が近くに居てくれる人間を誰も疑わなくて…ずっとバレなかったんだと思う。」
一応自分自身でも言葉遣いやマナーには気をつけていた。周りの会話を参考にし、人との食事は必ず周りが手を付けている仕草を確認してから食べ始めていた。咄嗟の判断と見様見真似でもバレなかったのは、クロードが気にかけ、よく行動を共にしてくれていたおかげだろう。
「バレたのは自業自得なんだ。…彼に正体がバレていたことを知って、動揺しちゃって…。私も、さっきの貴方と同じように、彼に刃を突きつけた。…そして、彼に怪我を負わせた。その光景を他の騎士に見られちゃってバレた、って話。逃げ回ったんだけど結局捕まって…たくさん、殴られた。手当てしてもらった傷のほとんどがそうだよ。」
ははっと笑うように言葉を終えた。そして再度落ち着いて言葉を続ける。でも純粋な疑問を抱くような彼だから、きっとこれだけじゃ物足りないのだろう。それに私も無意識に言葉を続けていた。
「でも、彼が助けてくれた。怪我で動けなかった私を抱えて、キゾンの王城から連れ出してくれて。…キゾンの追手に追いつかれた時、自身の身柄を引き換えに、私を逃がしてくれたの。…そうして私は、ベレアンに戻って来れた。私がバレずにキゾンで暮らせていたのも、こうして生きてベレアンに戻って来れたのも、全部クロードのおかげで…」
彼の名を口にしたとき、ホロっと涙が零れた。キゾンで彼と一緒にいた場面や彼の時折見せた優しい表情が思い起こされた。今ようやく事がひと段落し、張ってた気が緩んだせいだろうか。そんな彼を犠牲にしたこと、守れなかったこと。…それでも、もう一度会いたいと思っていること。零れた涙が止まることなく流れてしまい、それ以上言葉を続けることができなかった。
「彼がいつも、傍に居てくれたから…かな。あの人、騎士団長だったから…そんな人が近くに居てくれる人間を誰も疑わなくて…ずっとバレなかったんだと思う。」
一応自分自身でも言葉遣いやマナーには気をつけていた。周りの会話を参考にし、人との食事は必ず周りが手を付けている仕草を確認してから食べ始めていた。咄嗟の判断と見様見真似でもバレなかったのは、クロードが気にかけ、よく行動を共にしてくれていたおかげだろう。
「バレたのは自業自得なんだ。…彼に正体がバレていたことを知って、動揺しちゃって…。私も、さっきの貴方と同じように、彼に刃を突きつけた。…そして、彼に怪我を負わせた。その光景を他の騎士に見られちゃってバレた、って話。逃げ回ったんだけど結局捕まって…たくさん、殴られた。手当てしてもらった傷のほとんどがそうだよ。」
ははっと笑うように言葉を終えた。そして再度落ち着いて言葉を続ける。でも純粋な疑問を抱くような彼だから、きっとこれだけじゃ物足りないのだろう。それに私も無意識に言葉を続けていた。
「でも、彼が助けてくれた。怪我で動けなかった私を抱えて、キゾンの王城から連れ出してくれて。…キゾンの追手に追いつかれた時、自身の身柄を引き換えに、私を逃がしてくれたの。…そうして私は、ベレアンに戻って来れた。私がバレずにキゾンで暮らせていたのも、こうして生きてベレアンに戻って来れたのも、全部クロードのおかげで…」
彼の名を口にしたとき、ホロっと涙が零れた。キゾンで彼と一緒にいた場面や彼の時折見せた優しい表情が思い起こされた。そんな彼を犠牲にしたこと、守れなかったこと。…それでも、もう一度会いたいと思っていること。零れた涙が止まることなく流れてしまい、それ以上言葉を続けることができなかった。
「クレア。あのさ、俺はアンタに謝られる事なんて何一つ、無い、て思ってる。それに先刻の奴だって、俺の仇って訳じゃない。本当の仇は…一人だけ、だからさ。」
正直、最後の言葉はクレアの目を見ては言えなかった。実際俺が仇を討てばそれは、彼女の恩人の命を奪うことになる。
きっと謝らなきゃならねぇのは、俺の方だよな。
ロインは苦い顔情のまま、笑った。皆が善い様に、全てが丸く収まるなんてのは、所詮絵空事だ。其々が各々に己の中で落としどころを見つけて収めていく。大なり小なりわだかまりは残ってしまうもの。
「でもよく周りの連中にバレなかったな…つか、結局はバレたんだろ?」
でないと、あの怪我は説明がつかない。かなり無遠慮に話に突っ込んでしまったが、ロインは悪びれもせずにクレアを見つめた。そういやアヨルに「兄貴はズケズケとモノ言い過ぎ」とか「デリカシーが無さすぎる」とか言われていたっけ…と、こんな時になんというか、思い出してついまた目線を反らす。
傍から見ればまるでガキのような仕種だと、ロインは恥ずかしさに顔を赤らめた。
…今がちょうど、頃合いなのかもしれない。
「…アヨル、皆にロインが起きたことを伝えてきてくれる? それから、これからのことについて皆話し合いをしているようだから、…ロインの代わりに参加してきてくれないかな?お願い、」
そう頼むとアヨルは何かを察したのか快く承諾し、部屋を後にした。彼と2人きりで話がしたいことを遠回しで伝えたのだが、きっと分かってくれたのだろう。
それから再びロインを見て、顔を上げるように伝えた。
「…事情はアヨルから聞いたよ。…こちらこそごめん。私が邪魔しなきゃ、貴方の気持ちも…少しは楽になれたかもしれない。…敵を庇うなんて、馬鹿な人間だよね。」
あの時止めなければ、ロインにとっての敵討ちが成立していたかもしれない。父親を亡くし、妹を守るために自分がしっかりしなければと甘えを作らずここまで生き抜いてきた彼の経緯はどれほど辛いものだったか。
「でも、…そんな馬鹿な人が私以外にもう一人居たの。…私がベレアン兵士だと知りながら、私を助けてくれた銀髪のキゾン騎士。…きっと、貴方の仇と同一人物だと思うよ。」
それから落ち着いた様子で続けた。
「私はずっと、キゾン国にいたの。…国外遠征中に魔物に襲われて倒れていた私を助けてくれたのが銀髪の彼で。…彼は私がベレアン兵士だと知りながら、…それを仲間に密告せず、私の前でも知らないふりをして。…ずっと私を匿い、そして逃がしてくれた。…だから貴方が私を見つけてくれたあの日、キゾンの隊服を着てたの。…ずっと、キゾン国にいたから。」
…今がちょうど、頃合いなのかもしれない。
「…アヨル、皆にロインが起きたことを伝えてきてくれる? それから、これからのことについて皆話し合いをしているようだから、…ロインの代わりに参加してきてくれないかな?お願い、」
そう頼むとアヨルは何かを察したのか快く承諾し、部屋を後にした。彼と2人きりで話がしたいことを遠回しで伝えたのだが、きっと分かってくれたのだろう。
それから再びロインを見て、顔を上げるように伝えた。
「…事情はアヨルから聞いたよ。…こちらこそごめん。私が邪魔しなきゃ、貴方の気持ちも…少しは楽になれたかもしれない。…敵を庇うなんて、馬鹿な人間だよね。」
あの時止めなければ、ロインにとっての敵討ちが成立していたかもしれない。父親を亡くし、妹を守るために自分がしっかりしなければと甘えを作らずここまで生き抜いてきた彼の経緯はどれほど辛いものだったか。
「でも、…そんな馬鹿な人が私以外にもう一人居たの。…私がベレアン兵士だと知りながら、私を助けてくれた銀髪のキゾン騎士。…きっと、貴方の仇と同一人物だと思うよ。」
それから落ち着いた口調で自分の経緯を説明した。
「2カ月前、国外遠征中に魔物に襲われた私は目を覚ますとキゾン国にいた。森の中で倒れている私を見つけて運んでくれたのが、銀髪の彼だった。…彼は倒れている私からベレアン兵士用の腕章を取って、私がベレアン兵士だと知らないふりをして…私を匿ってくれた。…私はそんなこと全然知らなくて、必死キゾン騎士を演じ続けた。…けれどある日、私は彼にベレアン兵士だとバレていたことを知って、逃げ出そうとして…。一回捕まっちゃったんだけど、彼が助けてくれて、…私をここまで逃がしてくれた。だから、貴方が私を見つけてくれたとき、キゾン国の隊服を着ていたのは…あの日までずっとキゾン国にいたからなの。この傷は、…一度捕まった時に受けた傷と、ここまで必死に逃げてきたときにできた傷…なんだ。」
フゥと一息抜くと、思い切ってロインは口を開いた。
「その…アレだ。先刻は済まなかった。」
そう言って、深々と頭を下げた。
いくら頭に血が上っていたとはいえ、理不尽に「殺す」だなんて言うべきじゃない。あの場でクレアが立ちはだかったのにだって、理由が有った筈。訳も知らずにただ命を奪うんじゃ、あの銀髪野郎と変わらねぇ。
そんな傍若無人に振る舞う自分を、自身で許せなかった。ロインは反省しつつも、あの時のクレアの態度も思い返していた。少なくとも二人は顔見知りであったらしい。経緯は様々、クレアが村へ逃げてきた訳も、嘘をついて傷の理由を誤魔化しただろう事も、クレアからもう一度直接聞く必要がある。
本当の判断を下すのはそれからだ。ロインは強く決意を抱いて、下げた頭の合間からちらりとクレアを覗い見た。
住民たちの様子を伺うと、悔しそうに泣き崩れる人もいれば安心したように胸を撫で下ろしている人たちもいる。確かに敗戦は悔しい、しかしそれよりもあの洪水から難を逃れられたことに何よりの安堵を感じ取れた。私もどちらかと言えば後者だ。この戦争の終焉がついに来たかと、入っていた力が少し抜けた。
これからどうすればいいか、どこへ向かえばいいか、皆話し合いを始めている。自分も加わるよう依頼されたが、ロインの様子が心配だから後で向かうことだけ伝えた。
ロインを運んだ小屋の中へ向かう。私はこれまで通りの接し方を心がけようと決心していた。きっとこの一件で彼は私に強い敵意を向けてくるかもしれない。”この裏切者が”と罵るかもしれない。それでも私は、彼から受ける全てを受け入れるつもりだ。
部屋の入口に足を踏み入れる前、アヨルが誰かと話す声が聞こえた。すぐに部屋の中を見るとロインが目覚めていたのだ。これもまた安堵の息を漏らす。
「ロイン…!」
すぐそばまで近寄る。彼は少し動揺しているように見えた。
「…目が覚めてよかった。まだ、ゆっくり休んでていいよ。」
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いえいえ!こちらの展開の方が助かりました!
ありがとうございます
すぐ横では心配そうに見つめる妹アヨルの顔があった。
「兄貴…。」
何を言おうか迷っているのか、アヨルが口ごもる。そんな妹に、心配ねぇよ、と笑いかけてロインは彼女の頭を撫でた。
「それより、だ。腕の怪我は…大丈夫か?」
頷いて、きちんと治療を施された腕を差し出して、アヨルは兄に見せた。細腕に巻かれた包帯に、少しばかり悲しげに瞳を揺らす。だがそれ以上はいつもと変わらず明るい笑顔で彼女の心配を払しょくするように、ロインはぐしゃぐしゃとアヨルの頭髪を搔き乱した。
「まあ、やっちまったことは仕方ねぇしな。すぐに元通り、きれいに治るさ。」
けど無茶は禁物だぞ、と釘を刺す事も忘れない。そうして、ロインは完全に身を起こすと、今度はクレアの姿を探し見た。
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一応、カイ様とは別れた後…という事にさせてもらいました。カイ様お見送り~のやり取り想定してらっしゃったのなら済みません。
すぐ横では心配そうに見つめる妹アヨルの顔があった。
「兄貴…。」
何を言おうか迷っているのか、アヨルが口ごもる。そんな妹に、心配ねぇよ、と笑いかけてロインは彼女の頭を撫でた。
「それより、だ。腕の怪我は…大丈夫か?」
頷いて、きちんと治療を施された腕を差し出して、アヨルは兄に見せた。細腕に巻かれた包帯に、少しばかり悲しげに瞳を揺らす。だがそれ以上はいつもと変わらず明るい笑顔で彼女の心配を払しょくするように、ロインはぐしゃぐしゃとアヨルの頭髪を搔き乱した。
「まあ、やっちまったことは仕方ねぇしな。すぐに元通り、きれいに治るさ。」
けど無茶は禁物だぞ、と釘を刺す事も忘れない。そうして、ロインは完全に身を起こすと、今度はクレアの姿を探し見た。
差し出されたアミュレットを少女の手元に戻す。
「…なら尚更、君が持っていた方がいい。君も酷い怪我をしているんだ、早く治った方が兄も安心するだろう?…それに君にとって大事なものなら、他人に何と言われようと大事にしなさい。」
彼女に言い聞かせたが、半分自分にも言い聞かせていて。物ではないが、大切な人達が祖国で待っている。身を挺して俺に後を繋いでくれた人がいる。例え罪人だろうと、捕虜であろうと、自分は大切にしたい人なのだ。周りから何と言われようとも。
「…彼の言う通り、それはアヨルが大切にしなきゃ。…代わりに…ではないんだけど、これを貴方に託したい。」
そう言ってクロードから貰った短剣を差し出す。返り血などですでに錆かかっているが、クロードに渡して欲しかった。彼が無事に帰れることを信じんて、彼からあの人に伝えて欲しい。
「…あの人に、これを返して欲しい。それか伝えて欲しい。…いつか必ず、会いに行くと。」
「…分かった。サイルにも、同じことを伝えておく。」
「…あの子のことも、クロードのことも、よろしくね。」
いつ何時彼との別れが来てもいいように託したいものを託した。それからロインを馬に乗せ、アヨルに支えてもらいながらロインを運ぶ。手綱はカイが持ち、誘導する。
こうして戦争は大軍を少数の力で見事押さえ込んだキゾンの勝利で幕を下ろした。
差し出されたアミュレットを少女の手元に戻す。
「…なら尚更、君が持っていた方がいい。君も酷い怪我をしているんだ、早く治った方が兄も安心するだろう?…それに君にとって大事なものなら、他人に何と言われようと大事にしなさい。」
彼女に言い聞かせたが、半分自分にも言い聞かせていて。物ではないが、大切な人達が祖国で待っている。身を挺して俺に後を繋いでくれた人がいる。例え罪人だろうと、捕虜であろうと、自分は大切にしたい人なのだ。周りから何と言われようとも。
「…彼の言う通り、それはアヨルが大切にしなきゃ。…代わりに…ではないんだけど、これを貴方に託したい。」
そう言ってクロードから貰った短剣を差し出す。返り血などですでに錆かかっているが、クロードに渡して欲しかった。彼が無事に帰れることを信じんて、彼からあの人に伝えて欲しい。
「…あの人に、これを返して欲しい。それか伝えて欲しい。…いつか必ず、会いに行くと。」
「…分かった。サイルにも、同じことを伝えておく。」
「…あの子のことも、クロードのことも、よろしくね。」
いつ何時彼との別れが来てもいいように託したいものを託した。それからロインを馬に乗せ、アヨルに支えてもらいながらロインを運ぶ。手綱はカイが持ち、誘導する。こうして戦争は既存の勝利で幕を下ろした。
「あの、助けて頂いて本当に有り難うございます。それで…コレ、お母さんが使っていたお守りなんですが、きっと…持っていると怪我が早く良くなるおまじないがあるから。お渡しします。」
そう言って傷のお詫びに再度、アミュレットをカイに差し出す。クレアにも視線を送り、渡すもう一つの理由を打ち明けた。
「…実はさ。兄貴はあんなだから、大事なものなんだけれど持ち辛くて。」
刻まれた紋章を見れば、その理由は一目瞭然だろう。アヨルは母親がこれを手に取る度、苦し気な表情を緩ませていつも自分に「おかげで少し楽になった」と微笑んでくれていたのを知っている。だからきっとこのお守りには傷を癒す効果があるのだ、と。ずっとそう信じてきたから、酷い目に遇わせてしまった命の恩人に、少しでも報いたい。そう願う気持ちも、アヨルには本物だった。
兄貴は、言い伝わったお守りの効果は「迷信だ」と、一切取り合ってはくれなかったけれど。
「大丈夫だよ。彼は悪い人じゃないって、分かっているから。…まあ、彼は私のこと、嫌いになっちゃったかもだけど。」
それから一呼吸置いてカイの方を見つめる。
「…彼は、私を助けてくれた人なの。貴方たちに見逃してもらった後、必死になって国境を越えて。…力尽きて倒れていた私を見つけて、救ってくれた。…私が今生きていられるのは、彼らのおかげなんだ。…だから悪い子じゃないの。…どうか、見逃してあげて。」
「…はぁ……だから、もともと殺すつもりはないって言ってるだろ。」
大きくため息を吐きながら彼女たちに伝える。この場はお互いに見逃す。これ以上長居してこの場を他の誰かに見られてしまったら、彼らが傷ついてしまうかもしれない。そろそろお開きの時間にしなくては。
「少女は馬に乗れるか?俺の馬で兄貴を近くまで運んでやる。…君と俺は徒歩だ。さすがに兄貴が目覚めて反撃されたら困るしな。」
そう言って口笛で馬を呼んだ。
「あのぅ…」
ただそれでも兄貴の事は詫びたかったし、悪く思わないで欲しい。そう願って二人に恐る恐る声をかける。
「ごめんなさい。」
何も言えずに、結局頭だけ下げる。二人の顔をまともになんて到底見れない。結果は結果だと割り切る思考があるから、兄貴のようにキゾン兵だからと言って憎む気持ちはない。でも、他人は違うのだ。仕方がなかったんだと、傷つけられて、刃を向けられて、納得する筈がない。
そして短期間とはいえクレアに姉のような親近感を勝手ながら抱いていた。だからクレアには特に兄貴に悪印象を持って欲しくなかった。
「…虫のいい話だけど。兄貴の事、嫌いにならないで…。」
頼りなく、アヨルは消え入りそうな声で呟いた。そして、言い訳するように独り言ちに語り出す。
「…一年位前にはなると思うけれど。一番酷かった戦いに親父は出征してたの。…一番上のお兄ちゃんは後方支援隊で遅れて参加していて、お兄ちゃんが着いた頃にはあちこちに負傷者が出てたんだって。
…親父は、足が折れて立てなかったらしい。でも、突然、「退却せよ!!」って声が奥から響いて…兄貴が言ってた銀髪の人が血だらけで走ってきた。走ってきて、ろくに親父の状態を見ずに、剣を振り下ろした…、て。その時、その人に付いた血が返り血なんだと気が付いた、ってお兄ちゃんは言ってた。その人の後ろから来た人は無くて、濃い霧が雪崩れ込んですぐにその一帯は見えなくなった、て言ってた。
数日経ってから戦場に戻れば、誰一人、生きてる人はいなかった。戦地を遡って起点になるらしい場所の遺体に毒の影響が見られたから、あの霧が毒だったって事が分かったけれど。殆どの遺体は首を剣で刺し斬られてた…って話だったの。」
実際には何一つ、自分は見ていない。アヨルはその事実が口惜しかった。お兄ちゃんが嘘を付いていると思わないけれど、立場が違えば見えてくる景色も違う。きっと、銀髪の人にも何か事情があった筈。
彼のカウントダウンが残り少ない瞬間、私は大きな声で彼に最後になるかもしれない言葉を吐く。
「人を守って死ねるなら、兵士としての本望だ!!」
そして彼は刃先を向けて突進してくる。”クロード、ごめん。”そう心の中で呟いて目を閉じた。それから数秒、待ってみたが痛みも血の流れる感覚もない。恐る恐る目を開けてみると、想定していなかった光景が広がっていた。
「……っ…これで満足か?……少年。」
ロインの刃を受け止めたのはカイだった。クレアを庇い、腕でロインの刃を受け止めていた。深くまで刃が刺さっており、そう簡単に抜け無さそうだった。きっと刃を抜けば大量に血が噴射するだろう。滴り落ちる赤い血がどんどん増えていった。
「…妹の前で人殺しになるな。…ちゃんと、守ってあげられるお兄さんになりなさい。」
そう伝えるとロインの首元を打ち、ロインを気絶させる。クレアは「ロイン!」と声を上げて彼の元へと駆け寄った。気を失っているだけであるのを確認して胸を撫で下ろす。そしてアヨルもこちらへ来るように呼んだ。起きたときに私がいるよりも彼女に居てもらった方が安心するだろうし。
そして私は男性に向き直る。
「ご、ごめんなさい…!すぐに処置しないと…!」
「心配しなくていい。…っ…彼も誰かを傷つけないと、…っ…気が済まなかっただろうしな。」
刃を腕から抜き、必死に抑える。苦しそうな表情に私はすぐに服の袖を切って巻き付け始めた。
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう強く宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
------
ロインも、クレア様の 罪の告白=戦争 ということは十分理解してますから。ただ憎しみを昇華させるには持っている感情があまりに大きい。なのでどこかにそれを鉾の先にして向けないと、ロイン自身が持ち堪えられない、といった所です。
カイ様が退けば、ロインは刃を納めますので。でも、戦えばカイ様の方が確実に戦闘技術は上です。
アヨルが長兄から聞いた、例の戦場の話を詳しく聞く、というのもアリです。(ロインを気絶させれば稼働させれます。その際はアヨルがきっかけを作りますよ)
ちなみに、御提案のロインにサイルを当てる件、試してみたら非難の応酬でした。どうもあの二人の相性は悪いようです(笑) それなりに性質は似た者同士なのかもしれません。(まだクロード本人をあてがった方がマシでした。困った奴らです。サイルの裏設定認可も有難うございます)
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう強く宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
------
ロインも、クレア様の 罪の告白=戦争 ということは十分理解してますから。ただ憎しみを昇華させるには持っている感情があまりに大きい。なのでどこかにそれを鉾の先にして向けないと、ロイン自身が持ち堪えられない、といった所です。
カイ様が退けば、ロインは刃を納めますので。でも、戦えばカイ様の方が確実に戦闘技術は上です。
アヨルが長兄から聞いた、例の戦場の話を詳しく聞く、というのもアリです。(ロインは気絶させて)
ちなみに、御提案のロインにサイルを当てる件、試してみたら非難の応酬でした。どうもあの二人の相性は悪いようです(笑) それなりに性質は似た者同士なのかもしれません。(まだクロード本人をあてがった方がマシでした。困った奴らです。サイルの裏設定認可も有難うございます)
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう強く宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
------
ロインも、クレア様の 罪の告白=戦争 ということは十分理解してますから。ただ憎しみを昇華させるには持っている感情があまりに大きい。なのでどこかにそれを鉾の先にして向けないと、ロイン自身が持ち堪えられない、といった所です。
カイ様が退けば、ロインは刃を納めますので。でも、戦えばカイ様の方が確実に戦闘技術は上です。
アヨルが長兄から聞いた、例の戦場の話を詳しく聞く、というのもアリです。(ロインは気絶させて)
ちなみに、御提案のロインにサイルを当てる件、試してみたら非難の応酬でした。どうもあの二人の相性は悪いようです(笑) それなりに性質は似た者同士なのかもしれません。(まだクロード本人をあてがった方がマシでした。困った奴らです)
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう強く宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
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ロインも、クレア様の 罪の告白=戦争 ということは十分理解してますから。ただ憎しみを昇華させるには持っている感情があまりに大きい。なのでどこかにそれを鉾の先にして向けないと、ロイン自身が持ち堪えられない、といった所です。
カイ様が退けば、ロインは刃を納めますので。でも、戦えばカイ様の方が確実に戦闘技術は上です。
アヨルが長兄から聞いた、例の戦場の話を詳しく聞く、というのもアリです。(ロインは気絶させて)
ちなみに、御提案のロインにサイルを当てる件、試してみたら非難の応酬でした。どうもあの二人の相性は悪いようです(笑) それなりに性質は似た者同士なのかもしれません。
「違う、…あの人がそんなこと、できっこない…っ」
震えた声で彼の無罪を主張した。あの人が無差別に人を殺すわけがない。感情が読みづらくて一見怖そうに見えるけれど、ただ不器用なだけで本当は人思いの優しい人なんだ。私はちゃんと知っている。この目で見てきたのだから。過去の事実は私には分からないし、ロインが言っていることが真実だろうと、私は私の目で見たことを信じるしかできなかった。
「君は下がれ。あいつの標的は俺だ、…ここで君が犠牲になってしまえば、クロード様に合わせる顔がない」
「…!!…………、…そっか…あの人は、…クロードは、生きているのね。」
少しだけ振り向き少し潤んだ瞳でカイに微笑みかけた。その言葉がどれほど嬉しいことか。身体を張って私を守ってくれた彼が、私のせいで処分されたと思っていた彼が生きているなんて。彼の口ぶりからきっと生きているんだと理解した。尚更、あの人の大事な仲間の彼を守らなくては。
「ロイン、…私だって非道な人間だよ。この国のために、他国の軍人を殺した。”苦しんで死にたくない”と懇願されて仲間や市民を殺したことだってある。…私たちが”戦い”を選ばなければ、失わずに済んだ命は山ほどある。…過去は変えられないけれど、これ以上同じ過ちは繰り返しちゃいけないのよ。敵も、…私たちも。」
奪う選択ではなく助け合う選択肢を。例えこの行動が”非道だ”と言われても、人を殺すこと以上に非道な行いはない。人を守ることを”非道”と呼んだら、それは大きな間違いだ。
「アヨル、…この人に助けてもらったことは本当?」
この事実は彼から聞くよりもアヨルの口からちゃんと伝えてもらった方がいい。私も、彼にはサイルを助けてくれた借りがある。クロードが生きているということはサイルもきっと生きている。そう信じてアヨルの言葉を待った。
「やめてよ!!バカ兄貴っ!!」
寸での所でアヨルは兄の手を払い飛ばした。不意の行動によろめくも、ロインは軍人の手からアヨルの腕を奪い返し、自分の元へ引き寄せる。そして庇う様にアヨルの体を自分の背兄貴と隠した。
「この人は僕のことを助けてくれたのっ! 勘違いしないでっ!!」
必死で兄の背中を叩いて抗議する。傷の手当てをしている間に向けられた彼の心配そうな眼差し、丁寧な傷口の処置、何より自分に向けられた真摯な声が、ちゃんと人間として相対してくれているとすぐにわかる。そんな人が悪い人間である筈がない。
敵意剥き出しで、憎悪に染まった双眸を命の恩人に向ける兄貴に、アヨルは切羽詰まった声で訴えた。
「騙されんな!!こいつらはっ…キゾンの軍人は皆鬼だ!!人でなしなんだよ!!
親父がこいつらに殺されたのを忘れたのか?!! 動けねぇ親父の首を斬ってとどめを刺したの忘れたかっ?!!」
アヨルに言い聞かすというより、抑え切れない憎しみを吐露するようにロインは怒号をぶちまけた。親父の最期を見てきた長兄から直接聞いたのだ。あの悲惨な戦場の、敵将が行った仕打ちを。毒靄で全てが飲まれてしまってもその前に起きた許せない行為を明らかにしたい。正義感などではなく、ロインの心にあるのは私情の憎悪だけだった。全ての人間にその罪を明らかにし、そいつの名誉も尊厳も完膚なきまでに叩き潰したい。そんな激しい怒りが犇めいている。
「てめえもっ!!あの蒼の銀髪野郎の手下だろう!!生き残ってる連中を…っ!!無抵抗の奴らを殺して回る外道に情けは無ぇっ!!!!」
兄の言葉に思わず、無意識にアヨルは首筋を─頸動脈を庇う様に手で押さえた。信じてた筈のカイへの視線が僅かに揺らぐ。
「で…でも、兄貴…」
「そういやそいつ…銀髪野郎は仲間の大将も殺して回っていたみたいだな? 毒靄が回れば自分の非道な罪が隠せるとでも思ったか? 自分だけ生き残れば後は“死人に口無し”なんて考えてたんじゃねえか?」
目の前で転んだ彼女のもとへ向かい、血が流れている腕を掴む。細かい木くずが傷口についている。すぐに備えていた水筒を取り出し、「染みるが我慢してくれ」と言葉を添えてから傷口に水を掛ける。それからなるべく清潔な布を取り出し傷口から丁寧に木くずを取り除く。ある程度治療が終わったところで布をそのまま手際よく巻き付けた。
「俺は君を殺さない。だから落ち着いてくれ。傷は応急処置はしたから、あとはちゃんと救護所へ行って手当てしてもらいなさい。それから…これは大事なものだろう。」
彼女の目を見ながらちゃんと伝える。そして先ほど投げ捨てたアミュレットを手渡す。彼女が大事そうに握り締めていたことを見ている。この紋様は我らキゾン国のものだが、なぜベレアン国の少女が持っているのか、気になってしまったが詮索はよそう。
「救護所の近くまで俺が付き添おう。だから__」
「アヨル!!」
その時、私は漸くアヨルの姿を見つけることができた。きっと自分の家の方に向かったのだろうという予想は的中した。しかし胸を撫で下ろせる状況ではなくて、私はすぐにクロードから貰った短剣を取り出す。キゾンの軍服を着た男性がアヨルの腕を掴んでいるのだ。連れ去ろうとしているか、殺そうとしているか。そのどちらかだと判断したからだ。
「その子から手を離しなさい!!…?!」
「!!…き、君は…!」
その男性は私とクロードを捕まえようと追ってきた人物で、サイルとクロードに助けられたものの私を逃がす判断を下したキゾン国の騎士だった。忘れるわけがない、それはどうやらお互い様のようだった。振り上げた短剣を、私は振り下ろすことができなかった。
「返します!! 返しますから!!助けて!!」
地面に投げ出されたアミュレットは、そのままカイの足元まで転がった。その動きとは逆にアヨルは後退り、体を反転させて立ち上がろうとした。その時、折れた木材の断片に腕を引っ掛け、手首から肘へ向けて皮膚が切り裂ける。血がアヨルの腕を瞬く間に赤く染めた。
「……ぃっっ!!!」
動けなくなる程の激痛がアヨルを襲う。思った以上に深く裂けた腕が、アヨルから血の気を奪う。傷口を抱えてアヨルはどうにもならずに地面へ転がった。
もう…もう、ダメだ。逃げられないし、助からない。自分の境遇を嘆いてすぐ上のバカ兄貴の顔や一番上のお兄ちゃんのが顔が目に浮かぶ。助けて欲しい。けど。それで兄貴達が傷を負うなら…最悪、死んでしまうかもしれないなら。
自分が酷い目に遭う方がまだ、いい。誰も(知り合いの)傷つく姿なんて見たくない、から。
目の前が滲んでいく。泣きながら、そうしてアヨルは抵抗するのをやめた。
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済みません。まだパニック中です。…というか、そろそろ冷静になりつつある、というところなので。
もう一押しのカイ様のアクション待ちさせて下さい。宜しくお願いいたします。
(アヨルの)地面へ転がる→コケて立ち上がれない状況。
傷口は深いけれど、範囲はカイ様の掌に収まる長さです。片手で十分止血可能。
木片は大きめのが刺さってるかもしれませんが、複雑に傷に入り込むまでには至っていません。指で十分抜けます。
兄貴のロインはクレア様の後を追っかけて遭遇するつもりでいます。(そして現場←アヨルのケガを見て、カイ様に食って掛かる予定。どんな対処をしても兄ロインは、キゾン兵だというだけで食って掛かりますので)
「返します!! 返しますから!!助けて!!」
地面に投げ出されたアミュレットは、そのままカイの足元まで転がった。その動きとは逆にアヨルは後退り、体を反転させて立ち上がろうとした。その時、折れた木材の断片に腕を引っ掛け、手首から肘へ向けて皮膚が切り裂ける。血がアヨルの腕を瞬く間に赤く染めた。
「……ぃっっ!!!」
動けなくなる程の激痛がアヨルを襲う。思った以上に深く裂けた腕が、アヨルから血の気を奪う。傷口を抱えてアヨルはどうにもならずに地面へ転がった。
もう…もう、ダメだ。逃げられないし、助からない。自分の境遇を嘆いてすぐ上のバカ兄貴の顔や一番上のお兄ちゃんのが顔が目に浮かぶ。助けて欲しい。けど。それで兄貴達が傷を負うなら…最悪、死んでしまうかもしれないなら。
自分が酷い目に遭う方がまだ、いい。誰も(知り合いの)傷つく姿なんて見たくない、から。
目の前が滲んでいく。泣きながら、そうしてアヨルは抵抗するのをやめた。
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(アヨルの)地面へ転がる→コケて立ち上がれない状況。
傷口は深いけれど、範囲はカイ様の掌に収まる長さです。片手で十分止血可能。
木片は大きめのが刺さってるかもしれませんが、複雑に傷に入り込むまでには至っていません。指で十分抜けます。
兄貴のロインはクレア様の後を追っかけて遭遇するつもりでいます。(そして現場←アヨルのケガを見て、カイ様に食って掛かる予定。どんな対処をしても兄ロインは、キゾン兵だというだけで食って掛かりますので)
「返します!! 返しますから!!助けて!!」
地面に投げ出されたアミュレットは、そのままカイの足元まで転がった。その動きとは逆にアヨルは後退り、体を反転させて立ち上がろうとした。その時、折れた木材の断片に腕を引っ掛け、手首から肘へ向けて皮膚が切り裂ける。血がアヨルの腕を瞬く間に赤く染めた。
「……ぃっっ!!!」
動けなくなる程の激痛がアヨルを襲う。思った以上に深く裂けた腕が、アヨルから血の気を奪う。傷口を抱えてアヨルはどうにもならずに地面へ転がった。
もう…もう、ダメだ。逃げられないし、助からない。自分の境遇を嘆いてすぐ上のバカ兄貴の顔や一番上のお兄ちゃんのが顔が目に浮かぶ。助けて欲しい。けど。それで兄貴達が傷を負うなら…最悪、死んでしまうかもしれないなら。
自分が酷い目に遭う方がまだ、いい。誰も(知り合いの)傷つく姿なんて見たくない、から。
目の前が滲んでいく。泣きながら、そうしてアヨルは抵抗するのをやめた。
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(アヨルの)地面へ転がる→コケて立ち上がれない状況。
傷口は深いけれど、範囲はカイ様の掌に収まる長さです。片手で十分止血可能。
木片は大きめのが刺さってるかもしれませんが、複雑に傷に入り込むまでには至っていません。指で十分抜けます。
兄貴のロインはクレア様の後を追っかけて遭遇するつもりでいます。(そして現場←アヨルのケガを見て、カイ様に食って掛かる予定。どんな対処をしても兄ロインは、キゾン兵だというだけで食って掛かりますので)
魔物を討伐後、ロインから声を掛けられる。焦った表情の彼とは裏腹に彼女の居場所を知っているつもりの私は冷静だった。彼の探す妹の場所に顔を向けたとき、言葉を失った。いるはずの彼女の姿がなかったからだ。すぐ近くには小さな女の子の姿が見えた。「アヨル、ここに居たよね?」と声を掛けると「アヨルちゃんならあっちに行っちゃったよ」と方角を指さした。その指先を辿ると町があった戦火の上がる景色があっった。
「まさ…か………」
何で?何でよりによって戻ってしまったの?そんなことが脳裏に浮かびながら、無意識にその方角へ走り出していった。
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少女は俺を見るなり怯えたように崩れる。見ればベレアンの住民のようだった。何も考えなしに手を差し伸べたせいで、敵も味方も忘れていた。
しかし俺には彼女を命を奪うつもりはなかった。それならこんな風に手を差し伸べはしない。けれど、これは演技かもしれない。俺の隙をついて殺そうとする…ベレアンはそういう人間だと小さい頃から叩き込まれていた。小賢しく非道な民族の集団、殺すに値する人間どもだと。今目の前で怯える彼女も…もしかしたら。…こんな時、クロード様ならどうするんだろう。あの人は、あの人なら。
俺は手に持っていた武器から手を離した。そして彼女に両掌を見せるように手を広げる。そして優しい声色で声を掛けた。
「…武器、怖かったね。脅かしちゃってごめんね。…怪我は、大丈夫かい?……もしかして、それを守ろうとしていたかな?」
少女の手元にあるアミュレットを見つめながら問いかけた。
逆光で顔や姿はよくわからない。でも兵士らしい感じはした。きっと、警備隊の人がたまたま通りかかって見つけてくれたんだろう。そう自分に納得させて、アヨルは自分よりも大きいその手を握った。
引き摺り出されて無事抜け出せたアヨルにの目に映ったのは、違う現実だった。
「……ィッ……ャ…あぁっ…!??」
自分でも驚く程強く、悲鳴を上げて身体を強張らせる。咄嗟に浮かんだのは、殺されるの一言だ。
「ご…ごめんなさい! 殺さないで!…ください、お願いです。お願い…します…。」
目を逸らすのでさえ、怖くて出来ない。その場に崩れ落ちて、声を震わせながらアヨルは必死で嘆願した。
その頃アヨルの姿が見えない事にロインは気づいた。代わりにクレアが視界に入ってくる。ちょうど魔物を討伐し終えて皆が喜びに沸いている状況だった。クレアも随分活躍したらしく、村の仲間達に囲まれて親しく打ち解けあっている。受け入れてもらえたんだな、と本来なら喜ぶ所なんだが。
「クレア。アヨルを見かけなかったか?」
妹が心配で、表情に出しはしないものの、焦る気持ちのままクレアに声をかける。
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ロインをクレア様に合流させますので、良ければ連れてってやってください。
アヨルは単にパニックを起こしているだけなので。落ち着けばちゃんと危険がないことや、カイ様の優しさに気付けるコです。+手には例のお守り(インペリアルエッグ型アミュレット)握り締めてますので。会話の取っ掛かりにして頂ければ良いかな…と。
新トピ立ち上げ、ありがとうございます。